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私(井上佳子)の祖父、井上富廣は、1938(昭和13)年、中国戦線で戦死している。
27歳だった。当時祖父には妻と三歳の息子がいた。私の祖母と父だ。召集されるまで祖父は熊本の片田舎で米をつくっていた。祖父は出征までの四年間を日記に記している。大地を耕して作物をつくる喜び、伴侶を得たことの嬉しさ、そして軍国の一翼を担いたいという強い思い。四冊の日記は祖母から父に渡り、今私の手元にある。
祖父は日記帳の一日一日を細かい文字でびっしりと埋めている。天候に右往左往しながらも少しずつ野良の作業がすすむ喜びや、結婚して二人仕事となり、おしゃべりしながら精出す様子など、決して経済的に恵まれない暮らしの中でも前を向いて生きる姿は心に沁みる。
そして今回、祖父が中国に行ってからの日記と戦地からツギエにあてた19通の手紙が祖母の遺品の中から新たに見つかった。これらから戦地に発ってからの祖父の詳細な足取りがわかった。
祖父は昭和13年6月11日に門司港を出航して上海に上陸後、わずか47日で戦死していた。日記は、上海に上陸直後、家をなくしてさまよう中国人を憐れに思う言葉で始まっている。しかし、前線に近づくにつれ、祖父は次第に戦闘に駆り立てられていく。殺さなければ殺される戦場で、祖父も狂気に飲み込まれてしまったのだろうか。
私は残された日記をたよりに、中国での祖父の軌跡を辿った。中国の人たちは、元兵士の孫である私をどのように迎えるのだろう。私は兵士の孫であることを伝えるのを、ためらった。
会うことがかなわなかった祖父なら、残された日記は、私にとって祖父からのかけがえのない大切なメッセージだ。祖父の戦争を、一日一日を、私が伝えたい。
井上 佳子(熊本放送ディレクター)
井上 剛(父) / 森山 遼(長男)
元日本軍兵士 ・ 元中国軍兵士 ・ 中国の現地の人たち
井浦 新 (テンカラット所属)
俳優 1974年東京都生まれ。
98年に映画『ワンダフルライフ」に初主演。以降、映画を中心にドラマ、ナレーションなど幅広く活動。
現在、NHK『日曜美術館』の司会を担当するほか、京都国立博物館の文化大使や『SAVE THE ENERGY PROJECT』のアンバサダー、そしてアパレルブランド『ELNEST CREATIVE ACTIVITY』のディレクターを務めるなどフィールドは多岐にわたる。
2017年には主演映画『ニワトリ★スター』『光』が公開予定。
春日大社を撮影した写真集『春日大社 千古の杜』が発売中。
熊本放送 井上 佳子
祖父が遺した日記を初めて目にしたのは、私が大学生の頃でした。野良仕事に精を出し、恋愛するごく普通の若者の姿がそこにありました。写真でしか知らなかった祖父が、初めて体温を伴って語りかけてきたような気がしたものです。それ以来、この日記に向き合うことは私の宿題となりました。でも何となく避け続け、遂に戦後70年を超えてしまいました。このままだと、もう何もわからなくなってしまう。お尻をたたかれる気持ちで、3年前、日記を丹念に読み始めました。出征前の20歳から25歳の祖父は、とてもおおらかで、少しおっちょこちょい。働き者で家族思いでした。
そして、おととしの4月、父が偶然、祖母の遺品のたんすから、出征後の日記を見つけたのです。そこには、家族の知らない、戦場の祖父の一面がありました。戦場の祖父に共存する温かさと冷たさ。これが今回の番組のテーマとなりました。
予想はしていたものの、やはり取材は困難を極めました。祖父の所属した第六師団第十三連隊の戦友会の名簿をもとに750人の方に手紙を出しましたが、この戦争を知る当時者に行き着くことはとうとうできませんでした。79年前の戦争ですから、仕方のないことかもしれません。一方、中国では、子供の頃の体験としてこの戦争を記憶している十人ほどに話を聞くことができました。しかしいずれにせよ、もっと早く取り掛かるべきだったという思いは最後までつきまといました。
今回の番組は、父、息子と一緒に祖父の戦争に向き合いました。最初は果たしてうまくいくのかとても不安でしたが、何とか完成させることができました。多くの示唆を与えてくださった審査員の方々に心から感謝しております。これからも、祖父の伝言を未来に大切に引き継いでいこうと思っています。