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2012年2月11日(土・祝)9:55~10:50 (テレビ朝日OA) 山陰放送制作
難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)の闘病を続ける元テレビ報道記者・谷田人司さん。病が発症後、歩く、食べる、話す、呼吸…と身体の自由を失いながらも、「自由が失われても生きる意味はある」と考え、何とか動く指を使い、そのことを人々に訴え、実践している。彼の闘病と活動にカメラが密着。谷田さんが綴った記録で描くドキュメント。
水の都、島根県松江市。日本で7番目に大きな湖、宍道湖に抱かれる街だ。宍道湖はシジミなどの魚介類に恵まれ、夕日が美しいことで知られる。
その宍道湖をこよなく愛し、家族とともにその湖畔に暮らす山陰放送報道部の谷田人司さん(50歳)。現在は、在宅でテレビ番組の企画立案などを担当する。
かつて地元では名物記者として知られ、記者時代は精力的に多くの取材を担当。記者という職業にこの上なく愛着を感じていた谷田さんだったが、2008年筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症。筋肉が次第にやせ、身体が動かなくなるこの病によって谷田さんは1年あまりで車椅子生活に。仕事を断念せざるを得なくなった。その後、呼吸筋が侵されたため気管切開をして人工呼吸器を装着。食事は流動食となり、声を失った。コミュニケーションの道具として使っているパソコンのキーボードを打つ手の動きも悪くなっている。
身体の自由がきく、残された時間をどう過ごすのか?谷田さんは絶望して死を望む患者に「身体の自由が失われても生きる意味」を訴えている。また、記者時代の経験を生かして療養しやすい社会づくりを行政に求めるなどの活動も続けている。
そんな谷田さんを支えるのは、妻・佳和子(みわこ)さん(47歳)。かつて多忙を極め家庭を顧みない夫との離婚を考えたこともあるというが、今は「病の夫を支えるのが私の使命」だという。
人工呼吸器の装着を「生きたいと思うのが当たり前」と振り返る谷田さんは、一人の患者をとても気にかけている。
島根県出雲市の奥井学さん(63歳)だ。近く人工呼吸器が必要になるとみられるが、「呼吸器をつける気はない」と宣言する。
谷田さんは語りかける。「生きる意味はある、共に生きよう」と。
そんな元記者の谷田さんが「最後の取材」をしたいと言い出した。
そのテーマは「閉じ込め症候群」とも言われるTLS(Totally Locked-in State)。
谷田さんは、東京都の鴨下雅之さん(52歳)と家族に取材の許可を取り付けていた。
鴨下さんは、難病ALSが進行して身体が一切動かず、意識がはっきりしていながら意志を表現できない。谷田さんにとっては、自分が将来陥るかもしれない状態だ。誰ともコミュニケーションがとれないこの状態に陥ったときに患者は、そして家族はどう生きていくのか?
谷田さんは「多くの人に伝えておきたい、記者として最後の仕事だ」と、笑顔で語り取材に向かった。
そこで見いだした「生きる意味」とは?
●谷田人司さん(島根県松江市在住 50歳)山陰放送の元報道記者、記者時代は精力的に多くの取材を担当。
2008年に筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症。
現在は、気管切開をして人工呼吸器で生活している
【谷田人司さんからのメッセージ】
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同僚の谷田さんが4年前に突然、ALSの診断を受けた。
同じ職場にいた私は、谷田さんの体が不自由になっていくのをただ見ていることしかできなかった。病気のためペンを持てなくなった谷田さん。次第に足を引きずるようになり、
杖をつき、会社内でもしばしば転倒するようになった。
同僚の過酷な病気。私はこの事実にどう向き合っていいかどうか分からなかった。
その後、谷田さんは自宅療養に入り、職場からいなくなった。
私は自宅を訪ねようとも思ったが、勇気がなかった。
ALSは時間とともに進行する病気だと分かっていた。このため、谷田さんの状態や暮らしぶりを知るのが恐かったのかもしれない。
しかし、私は何となく谷田さんのことが気になり続けていた。
そして、仕事関係のメールのやりとりだけが続いていた今年の春、メールの中にこんな言葉を見つけた。
「体が動かなくなったら麻薬で死なせてほしいと思うでしょう。」
衝撃を受けた。さらにメールにはこうあった。
「取材して生きる意味を探したい」
私は思った。熱血記者としてならした谷田さんに再び自分の病気について取材し、生きる意味を探してほしい。そしてその記録を番組にしよう、と。
この企画が実現し、今年の5月から谷田さんにカメラを向ける日々が始まった。病気の進行をとらえ続ける厳しい取材だったが、谷田さんともう一度仕事をする、という喜びも感じられる日々だった。
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