新潟県の冬の味覚として真っ先にあがるのが、西洋ナシの「ルレクチエ」です。日本一の大河・信濃川の河川敷で作られるそのフルーツは、エレガントなスタイル、芳醇な香り、ジュワーっととろける口どけから、「西洋ナシの貴婦人」と呼ばれています。しかし、ここまで来るには苦難の歴史がありました。「桃栗３年、柿８年、ル レクチエのバカヤロウは１８年」と、生産農家からグチがでるほど栽培が難しく、かつては「ろくでなし」と汚名をきせられていました。
原産国のフランスではもう作られていないというルレクチエ、それがどうして新潟県で花開いたのでしょうか？それはずばり、果実のおいしさに惚れ込んだねばり強い農家がいたからです。苦難を乗り越え細々と流通していた「幻の果実」はいつしか新潟芸妓の間で噂となり、途絶えることなく今日まで続いています。
新潟の気候と県民性が合わさってうまれた「神さまからの贈りもの」と誇らしげに語るのは、ルレクチエ農家の渡辺康弘さん（５０）。
収穫してから果実を完熟させる「追熟」の工程で、モーツァルトピアノ協奏曲２３番を聞かせる、こだわりの持ち主です。西洋ナシの市場ではシェア１割にも満たない貴婦人を”もっとステキなレディになるように”と意欲的に勉強会にも参加。
そんな情熱家の康弘さんに今年、試練が待ち構えていました。果たしてどんな味に仕上がるのか、ルレクチエ農家の奮闘を追いかけます。
編集後記
ディレクター：高橋 紘子（新潟放送）
「新潟で西洋ナシと言えば…！？」との問いかけに返ってくる答えは「ル レクチエ」。このような街頭インタビューが撮れるほど、新潟県民には親しまれているフルーツなのですが、全国区でみると「ル レクチエ？初めて聞いた」「なんで「ル」と「レ」の間が半角あいているの！？」など、謎多きフルーツでもあります。県外にあまり出回らない理由は生産量の問題もありますが、「新潟は宣伝ベタだから」と言われることも多く、それならこの機会に新潟ブランドを知ってもらいたい、と取材に取り組みました。
１１０年あまり前にフランスから新潟にやってきたにも関わらず、日の目をみたのは平成に入ってから。その間どうやって生き延びていたのか？など調べるにつれ、一筋縄ではいかないル レクチエの魅力にいつしかどっぷり。そしてもうひとつはまってしまったのは生産農家の渡辺康弘さんの豪快な笑顔でした。ル レクチエを栽培するほか、畑に人を招き入れ、農業の楽しさを知ってもらう活動もしている康弘さん。何事にもチャレンジするその姿勢には、農業王国・新潟の誇りが満ち満ちています。ル レクチエ栽培は「画一的なマニュアルがないからこそおもしろい」と語るその言葉の裏には「どうやったら人は喜んでくれるか」を常に考えている姿勢があります。だからこそ、お手製の肥料を作ったり、果実に音楽を聞かせたりといった工夫が生まれるのです。ディレクターもこうあらねば！と強く心を打たれました。
ル レクチエは収穫してから完熟させる「追熟」の作業がマル必なのですが、新潟晩秋の気候（温度１２度～１５度、湿度８０％以上）で「放っておいたらおいしくなる」と言われ、自分用に会社の片隅で約４０日間放置。青色からブライトイエローに変化した“食べ頃”のものを食べてみると、康弘さんのものとは似ても似つかない味になっていたのです。制作スタッフみんなからまずいと言われ、品質管理の難しさを痛感…。簡単そうにみえる作業の中にも農家さんの技が随所に潜んでいる、その努力を感じながら味わいたい逸品です。
番組情報
◆渡辺果樹園/B>
【住 所】新潟県三条市井戸場１４３
【電 話】０２５６－３４－５４７０
【Ｈ Ｐ】http://www.nature-farm.com/
◆小池フルーツ農園
【住 所】新潟県新潟市南区東萱場６０９
【電 話】０２５－３７５－２０５９
◆フランス菓子１６区
【住 所】福岡県福岡市中央区薬院４－２０－１０
【電 話】０９２－５３１－３０１１
◆寿ゞむら
【住 所】新潟県新潟市中央区古町通９－１４８４
【電 話】０２５－２２９－４０２０
◆ティオ・ペペ
【住 所】新潟県新潟市中央区東中通一番町８６－８１
【電 話】０２５－２２５－６６７７
