宮城県・三陸沿岸の冬の風物詩といえば「かき」。冬の寒空の下でアツアツのカキを食べるのが宮城の人達の楽しみです。しかし、約3年前、津波の被害を受けたのは、まさに「かき」の漁場でした。
震災後、いまだに「かき」の出荷を果たせていない港町、南三陸町・歌津の伊里前湾で、たった1人、養殖業を受け継いだのが、千葉拓さん(28)。
番組では、この若き漁師に9ヶ月間密着取材。
ともに再開を目指していた漁師仲間は次々に廃業し、加工施設は建設中止になるなど、千葉さんは厳しい現実に立たされます。
しかし、故郷の海で生きていく覚悟をした若き漁師は、たった1人の後継者という重圧と闘いながら、震災後はじめてとなる「かき」出荷を目指します。
心の支えは、子供の頃、祖父が作ってくれた絶品の「焼き牡蠣」の思い出でした。「牡蠣」は、まさに「ふるさと」そのもの。その復活にむけて懸命に生きる、若き漁師の奮闘を追いました。
◆ 「おいしくて簡単!殻付きカキの食べ方」
① 大きめの鍋に水を少し入れる
② フタが閉められる程度の量の殻付きカキを入れる
③ 沸騰したらフタを少し開けて、そのまま15分蒸す。
④ 殻がぱっくり開いたら、軍手などを使って身を取り出して身を食べます。
殻付きカキならではの磯の香りたっぷりの味をご堪能ください。
※熱いので、くれぐれもやけどに注意!
編集後記
ディレクター:松本 真理子(フリーランス)
「こんなに旨味のある牡蠣は初めて!」と思わず言ってしまう印象的な味。それが歌津の伊里前湾でたった1人の後継者、千葉拓さん(28歳)の牡蠣。 香ばしい磯の香りと濃厚な旨味。それは、震災から1年後に仕込んだ小さな牡蠣を殻のまま焼いただけのシンプルなものでした。あえて言えば「海」を食べているような…。「これはどこで販売しているんですか?」と聞くと、「販売なんて夢のような話。でも…」千葉さんは続けました。「どんなに苦しくても、ふるさとの海で生きていく、俺はそう決めたんです。」 牡蠣の美味さと、この言葉に胸を打たれ、私は何度も歌津に通うことになりました。取材中、何度も厳しい現実に立たされた千葉さん。苦しみ葛藤しながらも一歩一歩進む姿は、粘り強い東北人そのものでした。ウマい牡蠣を育むふるさとの大自然を誇りに、ひたすら懸命に生きる「人と海の物語」です。