#402 母を失ったクマ クラウド

2024年09月28日(土) 05:20~05:50 (テレビ朝日 放送) 中国放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

九州では絶滅したとされ、広島県では絶滅のおそれがある」…ツキノワグマ。西中国山地の麓にある広島市安佐動物公園に、県北の里山からやって来た一頭がいます。幼かったこのクマは、かつて園内イチの人気もの。棒やバットを巧みに振り回しカンフー技のような仕草で来園者を楽しませました。名前はクラウド…実は悲しい過去を持つクマ。母親が駆除され、幼過ぎたため動物園に引き取られました。カンフーのような動きは寂しさを紛らわす行動…イライラするときに無意識ではじめてしまう動きでした。

安佐動物公園でクラウドの飼育を担当していた畑瀬(はたせ)淳さんは「クマが好む安心して寝られる環境を」と、その行動をやめさせました。クマのストレス軽減と寝ている本来の状況を見てほしいとの思いからです。

西中国山地のクマは推定で最大2000頭。ヒトとクマの生息域の区切りは年々失われています。2024年…全国でのクマによる死傷者数は200人を超え過去最多。住宅団地を近くに抱える安佐動物公園の敷地内にも現われるように…。ヒトとクマの衝突が今、懸念されています。

畑瀬さんは行政からの委託で、希少動物の調査を長年行ってきました。クマは基本、臆病でヒトを見たら逃げ出します。そうではない個体が軋轢(あつれき)を生んでいる…危ないクマ。再生可能エネルギーなどが注目され、開発で自然環境が変わりクマが住めない森が増加、「行くところがなく、ウロウロしている」現状。駆除と保護で揺れ動く自治体…動物園もクマを収容する余裕はありません。クマが暮らすことができる森を残すことが求められています。

ヒトとクマが共に生きる自然を残す…
「むかし、広島にもツキノワグマがいた」となる前に…!

編集後記

ディレクター:山本和宏(RCCフロンティア)

いましか撮れなくて、いま作る意味があるコンテンツにしたい。「日本のチカラ」は7本目になりますがいつもこのことを意識して制作します。一昨年は、被爆樹木(ウクライナ侵攻が続く中の緑のチカラ)去年は103才の哲代さん(人生100年時代をどう生きるか?(この春、映画になります!))

そして、今年はクマ。ニュースで取り上げられることも多いですが街に住む我々にはどこか他人事…(動物スクープ的に消費している感じすらある)ということで真剣に考えてみたいと思い取材しました。印象に残っている、安佐動物公園の畑瀬淳さんのコメントです。「クマが居なくても私たちは困らない。クマを駆除して全部いなくなっても大丈夫に思えるんですよ。街に住んでいると。クマが居なくなったら安心して山入って行って、いろんなことをすると思うんですよ。そうするといろんなものが無くなってくる。クマが住めるような環境にわたしも浸っていたい、でも山では会いたくない(笑)」
理屈では「生態系が崩れると私たちにも影響が出る」というお決まりの結論ですが、「自分と関係ないと感じているものは無くなって良いものではない」と教えられたようでした。

九州ではクマは絶滅したといいます。(2012年に環境省が絶滅宣言)将来、「むかし、広島(日本)にもクマが居た」というのは寂しい。絶滅が懸念される中でも、先進国でクマが増えているのは日本だけといいます。野生動物への畏敬を忘れないのが「日本のチカラ」なのかもしれません。

番組情報

中国放送 視聴者対応 
【電話】082-222-1155

ご意見・ご感想

皆さまからのご意見・ご感想をお待ちしております。
お寄せいただいたコメントにはすべて目を通しておりますが、必ずしも掲載されるものではございませんのでご了承ください。
なお、企画提案、商品宣伝、イベント告知等に関する投稿は固くお断り申し上げます。

※ 記入欄に、お住まい(都道府県)もご記入いただければ幸いです(任意)