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繊細な陰影とやわらかな色彩で表現される人物や風景、動物…。切り絵の作者は大分県日出町(ひじまち)在住の会社員・中島眞一さん(54)。先天性多発性関節拘縮(こうしゅく)症で手足が不自由なため、ふだんは車いすで生活しています。写真から下絵を描き、口にくわえたデザインナイフを操りながら、細かな線をカットしていく…テクニックは自己流。切り絵を始めたのは中学時代。学校の夏祭りで、灯ろうを切り絵で作ったのがきっかけでした。「黒と白=光と影で人物や風景を表現するところが切り絵の魅力」と話します。
鹿児島県出身の中島さんは就職を機に大分へ。掃除や洗濯など、身のまわりのことはほとんで自分でこなします。37歳のとき、大分県の障がい者アーティストグループ「元気のでるアート!」のメンバーに。以来、さまざまな場所で作品が展示されるようになり、国宝・霧島神宮(鹿児島県霧島市)の御朱印のデザインにも採用されています。人物の切り絵を得意とする中島さんの作品にたびたび登場する女性…それは、母・ミ子(みね)さん。幼いころから療育施設と学校の寄宿舎で生活していた中島さん。夏休みなど長期の休みのとき以外は家族と一緒に暮らすことができなかったため、大人になった今でも家族への愛は強いといいます。
2024年夏、中島さんは久しぶりに作品展示会の会場で公開制作をおこなうことに。制作風景をみつめる人垣の中に、鹿児島で暮らす家族の姿が…。障がいがありながら、自立した生活を送り、切り絵を通して多くの人と交わり、人生を楽しんでいる中島さんの日常を追いました。
編集後記
プロデューサー/ディレクター:藤澤 真由美(大分放送)
自身の努力と創意工夫で、健常者と同じように暮らしている中島さんの自立した生活は、驚きと気づきの連続でした。そして番組内では伝えられませんでしたが、健常者にとって便利なものの中には、身体障がい者にとって不便なものもあることを気づかされました。たとえば無人レジやコインパーキング、セルフ式のガソリンスタンドなど…。些細なことですが、スーパーマーケット等の買い物かごが高く積み上げられていることも、車いすユーザーにとってはひと苦労です。これも中島さんが活動的になんでも自分でやる性格だからこそ見えてくる現実なのだと感じました。
身近に障がいのある人がいると、今までとは違った視点で社会を見ることができます。そのきっかけを中島さんは「切り絵」でつくってくれているのかもしれません。しかし当の本人は、切り絵は「趣味」で、社会貢献などといった意識はなく、自分が好きだからやっているだけだと言います。切り絵を通して多くの人とつながる中島さん。謙虚で誠実な人柄もあり、制作依頼も多数…。口でデザインナイフをくわえて創作するため、最近、歯医者に行って「歯は大丈夫でしょうか?」と聞いたそうです。作ってみたいモチーフがまだまだたくさんあるそうですが、母・ミ子(ね)さんの作品は、これから先も、ずっと作り続けていくそうです。
番組情報
- 元気のでるアート!実行委員会
【住所】〒875-0041 大分県臼杵市大字臼杵72番地137(さぽーとセンター風車内)
【電話】0972-63-5888 [吐合(はきあい)]
【ホームページ】https://genkinoderuart.com/
※ 作品の一般販売はおこなっておりません。制作依頼等のご相談は上記ホームページ「お問い合わせ」からお願い致します。