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201人。日本で生まれ育ちながら在留資格を認められず、入管(出入国在留管理庁)の収容を一時的に免れる「仮放免」の状態で生活する外国籍の子どもたちの数です(2022年12月現在)。ほぼすべてのケースが親の入国時の問題や事情によるもので、子どもには責任がないにもかかわらず、健康保険証もなく、働くこともできず、許可がなければ都道府県をまたぐ移動もできません。
長野県に暮す18歳の彼女も、日系ブラジル人の父とタイ人の母をもつタイ国籍で、日本で生まれ育ちましたが、在留資格がありませんでした。高校2年生の冬には、家族で唯一在留資格を持っていた父親が病気のため他界。仮放免の母親は働くことができず、一家の収入は無くなりました。周りは中学3年生の弟と一緒に児童養護施設への入所をすすめますが、子どもの養育を条件に仮放免になっている母親が退去強制になる恐れがあり、親子3人の生活を選択。地域の人たちの支援などで暮らしてきました。2023年12月、在留特別許可が出され、この春、保育士を目指して専門学校に進みました。
行政書士の竹内波美男さんは、親子を支え続けています。日本で孤立しがちな外国籍の人たちは、まず正しい情報を知ることが大切だと話します。時折、親子を訪ね、生活の相談にのり、入管の手続きを手伝います。
東京にある支援団体APFS(Asian People’s Friendship Society)の吉田真由美さんは、子どもたちの悩みや不安に寄り添っています。子どもたちが悪いことをしたわけではないので、日本で生まれ育ったのだから、在留資格を与えてほしいと訴えます。
理不尽な現実と向き合い、将来の不安と闘いながら、あきらめることなく、夢に向かって歩み始めた、18歳の物語です。
編集後記
ディレクター:久野大地(信越放送)
仮放免で暮らす子どもたちはどんなことが不安なのだろう?
「私たちは普通に暮らしたいだけなんですよ。具合が悪い時には、普通に病院に行って。普通にバイトして。普通に学校生活を過ごして。普通でいたいんですよ。普通は人によって違うかもしれない。でも普通に過ごしたいだけなんです。周りの同い年の子に話しても理解してもらえない。だから、簡単に相談することもできない。」彼女はこう答えました。
彼女の発する言葉、子どもたちを支援する団体の掲示板に書かれた思い。私たちにとって「普通」と思わないことさえも、制限されてしまう。子どもたちには何の責任もないのに。
4月に専門学校に通い始め、生活が大きく変わった彼女。家族のこと、勉強のこと、不安や疲れが見えることもありました。取材には気丈に応えてくれましたが、今も様々な不安や恐怖と闘っているのだと思います。なぜ彼女がここまで背負わなければいけないのか、取材のなかで、何度も胸が苦しくなりました。
「子どもには何の罪もない。夢を追いかけて欲しい」。
彼女を応援したいと、行政書士の竹内波美男さんをはじめ、地元の社会福祉協議会、報道などで彼女を知った人など、支援者が多くいます。理不尽な境遇にめげず夢に向かって頑張っている彼女の言葉や行動には、人を動かすパワーがあるようにも感じました。
初めての保育実習でグループから離れて遊んでいる子に、優しく近寄って話しかける彼女の姿がありました。保育士になりたい。そんな夢を持つ彼女は、幼少期に保育園や幼稚園に通ったことはありません。保育士になって、一番したいことは?と聞くと、「保育園を作りたい。大人になって、あの保育園に通っていてよかったと思えるような保育園を作りたい。」少し照れながら話してくれた彼女の笑顔が今でも私の心に残っています。
子どもたちが未来に希望を持って、自分の夢を語れる社会であってほしい。
彼女の夢をこれからも応援したいと思います。
番組情報
APFS(Asian People’s Friendship Society)
【HP】 http://apfs.jp/