#391 きょうだい ~障がい者の兄弟姉妹として~

2024年07月13日(土) 05:20~05:50 (テレビ朝日 放送) RKB毎日放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

太田信介さん(48)は障がいがある画家の弟・宏介さん(42)と絵画ビジネスで起業しました。ファンも多く100万の値が付く作品も。
母・愛子さん(75)が、粘土遊びが上手な10歳の宏介さんを絵画教室に連れて行き、才能を育んだといいます。仲が良い太田兄弟ですが、若いころ、兄は弟の存在を恥じて、遠方に進学・就職。他人には、弟はいないものとしてふるまっていました。そんな信介さんが、会社を退職してまで、起業することを決意した理由とは…?
若くして管理職を任され、人間関係に疲れていた信介さんは弟の絵にいやされ励まされ「弟の絵を世に出したい」と思うように…。起業後は全国各地で年6回以上個展を開催。障がい者が家族にいる人が多く訪れます。様々な相談を受けた信介さんは「悩みを抱えて生きているきょうだいを支えたい」と「福岡きょうだい会」を立ち上げました。

福岡市の会社員・小川洋子さん(54)には、母の急逝後、軽度の知的障がいがある弟が残されました。障がい者年金を受けるための診断も受けておらず、手続きを皮切りに弟の全てが小川さんの肩にかかってきたといいます。途方に暮れる小川さんは「きょうだい会」の門をたたき、福祉に詳しい先輩たちのアドバイスを受け、弟をグループホームに預けることができ、現在はホームから職場に通っています。

小川さんは弟のことを「きょうだいと思ったことはない」と語ります。小学校では弟が原因で同級生からいじめられ、親に打ち明けることができず苦しみ、弟が原因で恋人と別れた経験も。弟ファーストの母からは「お姉ちゃんなんだから我慢しなさい、弟にやさしくしなさい」と厳しく教育されました。学業や、趣味の社交ダンスで良い成績を収めても、母は無関心。それが小川さんにとっても当たり前でした。
しかしその考えが覆されたのは、母の遺品整理のとき。出てきた「子どもの思い出箱」の中身の大半は弟のもので、小川さんのは小学校の連絡帳一冊だけだったのを知り「私の我慢づくめの人生は何だったのか」と怒りが爆発したといいます。小川さんは遺品整理をきっかけに、興味があった「断捨離Ⓡ」の講習を受け、「自分ありきでものを考えることが重要」と学び、今ではトレーナーの資格を取り講座を開くまでに。通信教育課程に入学した早稲田大学では、障がい者心理学の講座も受けています。小川さんの弟への思いは変わるのでしょうか?

一方、仲の良い太田兄弟。宏介さんは全寮制の支援学校の教育でベッドメイキングから洗濯まで何でもできるようになっていましたが、独り暮らしは心もとない…。兄は弟と同居するつもりはないといいます。将来は実家をグループホームに改造して宏介さんが絵を描きながら安心して住み続けられるようにしたいと計画中。

一言で「きょうだい」といっても、年上か年下かによって悩みが違います。「しっかり面倒をみなさい」と言われた兄・姉きょうだい。これに対し弟・妹たちは「障がい者を産んだ負けを取り返したい」と優秀であることを強く望まれるケースも多いといいます。
きょうだい会は、誰にも言えなかった悩みを仲間の前で打ち明け、一人で抱え込んだ重荷を下ろせる場所。人に打ち明けることで気持ちの整理がつき、聞いてもらうことで自信が持てるようになる、と太田さんは語ります。様々なケースを紹介し、障がい者きょうだいの現実を見つめます。

編集後記

ディレクター:石川恵子(RKB毎日放送)

太田宏介さんは‘自閉症の画家’なので、知らない人間である私たちスタッフを警戒するのではないか、という質問に兄・信介さんは言いました。
「いや、宏介はカメラ大好きですし、近寄っても全く気にしませんから大丈夫ですよ」。地元テレビ・新聞の取材が多く、カメラには慣れているどころか、むしろ撮影されることで制作活動へのモチベーションが上がるとのこと。楽しそうに鼻歌を歌いながら、絵の先生や撮影スタッフにアイコンタクトをとってくる宏介さん。

絵を習い始めたころは全く意思の疎通が出来なかったのに、好きな画に没頭することで精神面が落ち着き、生活の質が向上したそうです。人の能力(脳力)には無限の可能性がある、と改めて知りました。

また、きょうだい会の皆さんは、理路整然と熱く語って下さる方ばかりでした。そんな中、結婚に悩む若者がやって来ました。当然撮影はNG。「私は将来結婚できるのか」という真剣な悩みに、ベテランきょうだいの方々は「結婚は価値観が合わないとダメ」「理解がないやつは諦めて、次の人に行け」と口々に言い放つ…「随分ざっくりとしたアドバイスをするものだ」と驚いたのですが、帰り際に若者の表情が少し明るくなっていたのです。思いを共有したり、自分を肯定されることの重要性を再認識した、貴重な経験となりました。

今回の放送が、ひとりで悩んでいる方々にとって、心の重荷を下ろせる場所を見つけるきっかけになってほしいと願っています。

番組情報

福岡きょうだい会 https://fukuoka-sib.jimdofree.com/
全国きょうだいの会 https://kyoudaikai.com/
ギャラリー宏介株式会社 https://www.kousuke-ohta.com/

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