#390 樹を、成す

2024年07月06日(土) 05:20~05:50 (テレビ朝日 放送) 高知放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

木を加工して作品を作るウッドアーティスト、高知県香南市(こうなんし)の髙橋成樹さん(26)。1本の木から生まれるスツールやケーキスタンド、テーブルなどには、いずれも樹皮の一部やひび割れが残り、木が本来もつ姿を感じさせます。彼の作品はSNSを通じて人気を呼び、東京などで開く展示・即売を兼ねた個展には多くの人が訪れます。

髙橋さんにはもう一つの顔が…。それは間伐などをして豊かな森林を守る「山師」です。フリーランスで活動しながら、依頼を受けた山の手入れをしたり、祖父から継いだ山を管理したり…。山で自ら伐採した木や捨てられる直前の木を譲り受けて、作品をうみ出しています。

製材業をしていた祖父、大工だった父親の背中を見て育った髙橋さん。林業はずっと身近な存在でした。山師になり、ウッドアーティストとして作品を作る背景には、もっと多くの人に「山を知ってほしい」という思いがあります。深刻な担い手不足や森林環境の厳しさに関心を持ってもらい、山や木の美しさに気づいてもらいたい…その思いが髙橋さんを支えています。

その活動を知り、あるプロジェクトから声がかかりました。それは高知県馬路村(うまじむら)で管理されてきた樹齢100年から300年の魚梁瀬杉(やなせすぎ)を使って、作品を作ってほしいという依頼。現在、魚梁瀬杉は保護のため、伐採が禁じられていますが、保護される前に切られた木の株が馬路村森林組合の倉庫に20年以上放置されていました。はたして髙橋さんは、行き場をなくしていた木の株を生まれ変わらせ、再び価値を取り戻すことができるのでしょうか?

編集後記

ディレクター:有吉都(高知放送) ※「吉」は正しくは土の下に口

皆さんの生活の中でも、木でできたイスやテーブルは身近なところによくあると思います。私の家にも木の家具は数点あります。しかし、それを見て山を感じたことはありません。

今回の主人公・髙橋成樹さんの作品は虫食いの穴や樹皮の一部、乾燥の時にできる割れ目など、自然の中で確かに木が立っていたことを感じられるものばかり。「自然にいるそのままを残しつつ、ちょっとだけ味を出す」それがどれだけセンスと技術がいることか。作品作りの取材中には何度も感嘆のため息が漏れ出ました。無骨さとスタイリッシュさをちょうどいいニュアンスで作り上げる髙橋さんは、木や山に馴染みの薄い都市部の人たちにぐっと自然を近づける架け橋になっているように感じます。森林率が84%と全国一の高知県でも林業の世界は高齢化、後継者不足。山をきちんと管理しないと川や海も守れないし、おいしい野菜や魚も育たない。だから“山を知ってほしい”。まだまだ若い髙橋さんの真っ直ぐな思いが多くの人に届くことを願います。

番組をご覧になった方には、髙橋さんの作品や姿を通して山や木に関心を寄せていただければ幸いです。

番組情報

【髙橋さんのInstagram】narukitakahashi

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