#387 かさいのかっちゃ ~青森発!小さな町のなんでも屋~

2024年06月15日(土) 05:20~05:50 (テレビ朝日 放送) 青森放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

日本海と白神山地に囲まれた青森県鰺ケ沢(あじがさわ)町赤石地区に、唯一のスーパーマーケット「スーパーかさい」があります。64年間地元の人に愛され続けるこの店を切り盛りするのは、2代目店主の葛西姫子さん(67)。朝早くから総菜を作り、730分に店が開くころには売り場をいっぱいにします。一人暮らしの高齢者が多いことから、買い物に来られない人のために配達を行っているほか、送迎も行う葛西さん。総菜作り、店番、配達…いつも店の中、そして地区を走り回っています。

赤石地区で暮らすみなさんにとっても「スーパーかさい」はなくてはならない場所。

60年以上この地区に暮らす松山さん(86)は葛西さんとのおしゃべりが楽しみ。店に来ると買い物をする前に、レジの前に座って葛西さんとおしゃべり。一人で暮らす松山さんにとって、スーパーである以上に「心のよりどころ」なんだとか。

足が悪く買い物に行くことができない内山さん(85)は、葛西さんが作る特売のチラシを毎回心待ちにしています。チラシを見て電話で注文をするとお昼ご飯に合わせて持ってきてくれ、温かくておいしいお昼ごはんは幸せのひととき。

「お母さんがいないとわだち(私たち)死んでまるよ」そう語るのは、週に何度もスーパーを利用している世永(よなが)さん(78)。花が大好きな世永さんは、春になると庭に植えるための花を毎年買いに来ます。送迎をしてくれる葛西さんなら、大好きな花を好きなだけ買うことができるのです。

この60年間で地区の人口は、3500人以上減りました。人口減少に加え、車で10分ほどの隣町には大型スーパーが次々と出店。スーパーかさいのお客さんは年々減り、売り上げは落ちていく一方。それでも、雨の日も吹雪の日もこの地区で暮らす人たちのために走り続ける葛西さん。地区で暮らす皆さんが自分を頼ってくれること、そして「ありがとう」と声をかけてくれること。それこそが、葛西さんの背中を押してくれます。青森県の小さな町で、今日も温かい地域のつながりを大切にしながらスーパーを営む、お母さんの物語です。

編集後記

ディレクター:桑原 萌(青森放送)

おばあちゃんの家のように、温かく居心地のいいスーパーマーケット。初めて「スーパーかさい」に行ったときに、私が抱いた印象です。「お母さん」と呼ばれる店主の葛󠄀西さんは、電話が来ればすぐ配達へと向かい、歩いて店にきたお年寄りのお客さんがいれば声をかけて送迎をします。ときには相談にものり、いつも配達に行くお客さんから連絡がないとお家を尋ねに行くほど。少しおせっかいなお母さんが営むなんでも屋さんが「スーパーかさい」です。

でも取材を進めていくと、そんなお母さんの温かい「おせっかい」が地区を支え、この場所で暮らす人たちを元気づけていることに気づきました。地区の半分以上は高齢者。一人で暮らす方も多く、「寂しい」、「家族に迷惑をかけないで死にたい」。そんな言葉を時には口にしながらも、ふるさとの変わらぬ自然を愛で、毎日庭に咲くお花とおしゃべりをして、生活の中にささやかな「楽しみ」を見つけて日々を暮らしています。そんなみなさんのそばにいつも「スーパーかさい」はあるのです。食べ物や日用品を買うだけでなく、人とのつながりを感じることができる温かな場所。地区のみなさんにとって「スーパーかさい」は、そしてお母さんはいつでも元気をもらえる存在です。

「忙しい、忙しい」と言いながらも、みなさんから頼られ、笑顔が見られることが嬉しいお母さん。走り回っているときの姿がいつも少し嬉しそうでした。季節を感じてもらうため、節分など季節ごとのイベントにちなんだお総菜は欠かさず、気分が明るくなるような飾りつけも必ずお総菜の横に添える。自分を必要としてくれる地区のみなさんを大切に思うからこその小さな心づかいの積み重ねが、お母さんとみなさんのつながりを強めてきたのだと思いました。

山と海に囲まれた自然豊かな小さな町で、どこか懐かしい温かみを感じてもらえたらと思います。

番組情報

スーパーかさい
【住所】青森県鰺ヶ沢町赤石町宇名原16-1
【電話】0173-72-5103

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