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盛岡市の住宅街の一画に、それはあります。
盛岡神子田(みこだ)朝市。毎週月曜が定休、朝5時から8時までほぼ毎日開き、年間営業300日越えの“盛岡の朝の台所”。ニューヨークタイムズ紙で紹介された効果もあり、最近では外国からの観光客も訪れる、朝の元気スポットです。
農家などの生産者が自慢の野菜や果物を持ち寄り、直接販売するのが一番の特徴。旬の食材のおいしい食し方を聞いたり、オマケしてもらったり、お店の生産者とお客さんの活気あるおしゃべりが飛び交う、にぎわいの場所。ここ数年、コロナ禍で営業が難しくなった人たちも出店、スイーツ店や美容室、さらには整体院まで集まり、さながら“小さなまち”のよう。
様々な業種の出店を推し進めるのは、53歳の組合長。朝市ににぎわいを集めようと、クリスマスにはサンタに変身、お正月には初売り企画も立てるアイデアマン。彼を主人公に、朝市に集う人々の人間模様を伝えます。
朝市で稼ぐ…こだわり続ける91歳の超ベテラン女性セールスマン。長年ひたむきに働き続ける彼女には、今も背を押す、亡き兄の残した言葉がありました。
年配者が多い盛岡神子田朝市で、ひときわ若い女子高校生ボランティアスタッフ。朝市を支える彼女が感じる魅力とは…。
セルフレジやネット通販が当たり前の今、ここでは対面販売・現金取引がほとんど。およそ50年、途絶えることなく続いてきました。どんなに便利な世の中になっても、人と人とのつながりを、誰もが心の奥底で求めているのかもしれません。毎朝繰り広げられる、笑顔とにぎわいと人情の物語です。
編集後記
【ディレクター】鹿野真源(IBC岩手放送)
岩手県盛岡市の住宅街の一画にある、盛岡神子田朝市。
「おはようございます!」と、大きめの声であいさつしながら、ミラーレス一眼レフカメラを片手に、本格的に撮影を始めたのは2023年9月のこと。事前に決めたものを撮るのではなく、その時その場所で起こるものをつぶさに撮影することを心掛けました。
トウモロコシやゴーヤなどの夏野菜が終わると、白菜や里芋、マツタケなどの秋の味覚が、冬はリンゴ、春にはウドや姫竹などの山菜…、旬の食材が並ぶ様子に季節を感じながら撮影を続けてきました。
食材のおいしい食べ方を教えてもらったり、オマケしてもらったり、顔見知り同士の身の上話もあちこちで。出店する生産者とお客さんのふれあいは、朝市ならではの魅力です。
カメラを構えながら、半分はお客さん気分で、お店の人に話を聞きながらの撮影。最初は「どこから来たの?」「何の撮影?」と声をかけられることが多かったのですが、次第に「今日も来たの?」「こっちに座ってコーヒー飲んで」とあたたかく迎えてもらえるように。私に限らず、朝市のあちこちで、薪ストーブを囲んで談笑する人たちの姿。気の置けない雰囲気は、どっちがお店の人で、どっちがお客さんか分からなくなるほど。この小さな朝市で、それぞれが人との関係の中で自分の「居場所」を見つけているのだと思います。それこそが、盛岡神子田朝市が半世紀近くも途絶えず続いて来た、一番の理由なのかもしれません。
亡き兄の言葉に背を押され、朝市で稼ぎ続けてきた91歳の中村セイ子さん。人とのふれあいに大きな魅力を感じ、ボランティアスタッフとして汗を流す女子高生の城内凜さん。いろいろなお店が集まる“小さなまち”のような朝市を遊び場にして楽しむ小学生の佐々木祷気くん。そして、朝市をさらににぎわいのある場所にしようと奮闘する、組合長の吉田晃さん。この番組は、そんな彼らとの出会いでできています。
ネット通販やスマホ決済、セルフレジも登場する今日でも、朝市は対面販売・現金払いが当たり前。だからこそ、そこに会話が生まれ、心のやり取りが生まれます。いつの世も、私たちは心の奥底でそんなふれあいを求めているに違いありません。小さな奇跡のようなこの場所で、ひと朝ひと朝繰り広げられる「おはよう」で始まる物語を、今しばらく撮り続けようと思います。
番組情報
盛岡神子田朝市
【住所】岩手県盛岡市神子田町20-3
【電話】019-652-1721