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ご注意ください。
ディスプレイに映る看護師さんの映像に「昨夜からおなかが痛いんです」と言うと、『きのうからおなかが痛いんですね。それは大変ですね』と心配してくれる…リモートではなく「AIを使った予診」です。患者が話した内容をAIが認識し、あらかじめ撮影しておいた映像の中から適切な回答を瞬時に選び取って対話を成立させる「Talk With」というシステム。浜松市に本社を置くIT企業・シルバコンパス社長の安田晴彦さんが開発しました。
AIと聞くと、フェイク動画をイメージする人もいるかもしれませんが「Talk With」は映像や音声の生成は一切せず、本物の人間の映像だけを使います。その理由を聞くと「まばたきや息づかい、ちょっとした眉の動き…そういう人間らしさがある相手だと、人の心が動くんです」と安田さん。つらい症状のときは、心配そうな表情で聞いてくれると話しやすいうえ、大好きなアイドル本人と話ができたら感動して泣いてしまう人もいるかもしれません。人間の“分身”ともいえる映像と話すことは、生成された映像には決してできない「心が動く対話」なんです。
医療・介護業界では看護師や介護士、エンタメ業界ではアイドル、金融業界では受付スタッフと、いろんな業界で“分身”を作る仕事が増えつつある中、安田さんが急ピッチで進めているのが「語り部継承プロジェクト」。どんどん減っていく戦争体験者を「AI語り部」として未来に残す取り組みです。想定問答をひとつひとつ撮影するため収録に丸2日かかることもあるなど、高齢の語り部には負担をかける作業。しかし戦争の当事者と話をすることは、テレビや本とは全く違う意味を持ちます。「質問したらすぐ答えてくれて本物みたいだった!」「話しながら、ついうなずいちゃった」「悲しい気持ちがすごく伝わってきた」…浜松大空襲を経験した女性(85)の“分身”と話した小学生たちの心が動く瞬間を見て「リアルを追求してきて良かった」と安田さんは微笑みました。
子どものころ映画にハマり、映画監督を志したこともあるほど映像が好きな安田さん。「自分も人に影響を与える映像を作りたい」…映像とAIのチカラで、その夢を追っています。
編集後記
ディレクター:松木翼(静岡放送)
安田さんと初めてお会いした時、「心が動く対話と動かない対話があるんです」「映像を使った対話で人の感情を揺さぶりたいんです」というお話を聞いて、『人の心が動く瞬間が撮れればいい番組になるかも!』とビビっときました。番組に出てくる、AI語り部の女性と対話した小学生の表情がまさにそれで、手応えと共に、撮りたいものが撮れて安堵したのを覚えています。
AIを使った対話といえば、CGやアニメを思い浮かべる人が多いと思いますが、安田さんが開発する「Talk With」は違います。例えばアイドルを撮影すれば本物のアイドルと対話できるようになりますし、戦争の語り部を撮影すれば、貴重な証言を対話しながら聞くという形で未来に残すことができます。いわば“分身”を生み出すシステム。話す時のまばたきや息遣い…AIが生成するものは一切使わずに、人間そのものを残す映像だからこそ「心動く対話」が生まれる。撮影はものすごくアナログで手間がかかりますが、安田さんが最もこだわっている部分です。
小学生の頃からずっと映像に影響されてきた安田さん。「人の役に立ったり、人を幸せにしたりする映像を作っていきたい」…映像のチカラを信じて突き進む安田さんを取材しながら、テレビマンとして背筋が伸びる思いでした。
番組情報
株式会社シルバコンパス
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