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月に一度、みんなで手作りカレーの昼食をとる会社があります。熊本県熊本市にある新産住拓は、1964年創業の老舗住宅メーカー。社員有志が月替わりで役割分担し、手作りするカレーの日。配膳を担当していたのは二代目社長の小山英文さん(57)。役職や年齢に関係なく食事を楽しむというコンセプト通り、和気あいあいとした雰囲気です。
新産住拓のこだわりは木の“産地”。熊本の風土で育った「近くの山の木」で家をつくります。さらに見えないところまで無垢材を使うため、家は木の香りに包まれ、住む人をとりこに…。こうしたこだわりと社風に魅かれ、就職を希望する若者が後を絶ちません。
ところが、創業者の時代「お客様第一」の信念に徹するあまり、厳しい労働環境を強いたため多くの社員が辞職するなど、今でいう「ブラック企業」でした。そうした先代の姿を見ていた二代目社長は、理想の会社を作るための「人づくり」へと大きく舵を切ったといいます。
今年9月に家を建てた 社員の松井洸樹さん(28)と平野佳菜子さん(29)夫婦。WEB担当と営業担当のふたりは「見えないところのこだわりまでお客様に見せたい」と家づくりの過程をSNSで細かく発信。『家を建てる側』に立つことで家を建てる喜びや不安、完成後のケアの大切さを実感できたと話します。
現場監督として働く武田空さん(25)は、高校時代から「木の家」をつくる新産住拓に憧れ念願の就職を果たしました。姉の姿に影響されたという弟・大和さん(22)も学んできた伝統建築技術を生かせる場所だと確信し、現在は大工として活躍中。野球好きのふたりは職場のチームにも所属し、社員やスタッフと交流を図っています。
二代目社長が目標に掲げるのは「働きたい会社ナンバーワン」。仕事に必要なチームワークの形成、上司と部下とのコミュニケーション手段など「家づくり」に必要不可欠だという「人づくり」を追いました。
編集後記
ディレクター:浅木真由美
「ブラック企業」からの転換―。これは時代に合わせた大切な変化です。
番組取材のために読んだ新産住拓の軌跡をまとめた資料には、創業者・小山幸治氏の実績が書かれていました。地産地消を目指す県産材の家づくり、てまひまかけた自然乾燥でつくり上げる木材、建築用材料を事前に工場で加工する「プレカット」の導入など、今では聞き慣れた家づくりの工程や仕組みを、いち早く導入。それもすべて「お客様により良いものを提供したい」という思いから実現したものでした。
一方、顧客優先への強い思い、さらには「先輩の背中を見て仕事を覚えろ」という
昔ながらの指導体制など、時代にそぐわなくなった面に戸惑い、離職者が続いてしまう
時期も。そこから二代目社長の改革につながるわけですが、このような状況は多くの企業が経験してきたのではないかと思います。(決して昔のやり方を賞賛するわけではありません。)
長年勤務する社員のみなさんが口を揃えていうのは、
「会長(幸治氏)は厳しかったけれど、間違ったことは言っていなかった。」ということ。
そして、「厳しいけれどあんなに思いやりのある人はいない」と仕事の現場や宴会時のエピソードなど会長との思い出も語ってくれました。
なかでも印象に残ったのは「会長は礼儀作法や身だしなみにも厳しく、お茶の淹れ方、食事のマナーなどもすべて指導された」という話。当時「新産住拓で働いた経験があればどこでも働ける」と言われていたそうです。
父親から受け継いだ「いい会社」を時代に合わせて「働きたい会社」に育て続ける
二代目の社長と一緒に、会長にも話を聞いてみたかったです。
番組情報
新産住拓
【HP】 https://www.shinsan.com