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“へそ太郎おじさん”は愛媛県大洲市でちょっと知られた芸の達人。腹話術から人形劇、オリジナルの踊りまで幅広い芸を披露するのは、老舗石材店の石職人、玉井義幸さん(69)。大洲人形劇サークル「へそ太郎」の代表を務め、700回以上の公演を行ってきました。メンバーは6人。仕事や家庭の事情もあり、一回の公演に集まってくるのは3~4人、2人だけの時もあります。人形は半世紀近く修理を重ねながら使い続けてきました。そんな手作りの人形劇は、子どもたちに大人気。特に玉井さんの腹話術“きよし君”は、爆笑につぐ爆笑。
人形劇には人への思いやりや挑戦心など、たくさんのメッセージが込められています。そこには子どもたちの成長と幸せを願う玉井さんの思いが。「夢も希望も生きてこそ」。人形劇以外の活動もあります。オリジナルの「かかし踊り」は、地域の祭りで目玉のイベント。飛んだり跳ねたり、激しい動きが1分半も続きます。若いころは平和を願い、ニューヨークやモスクワの路上で踊ったことも。しかし70歳が近い今は、息も絶え絶え。そんな玉井さんの様子を、幼いころから見てきた長男の望夢(のぞむ)さん(30)。かかし踊りを継ごうとステージに立ちます。その様子を見守る玉井さんの思いとは…。いつも笑顔で全力の玉井さん、今日も子どもたちのもとへ向かいます。
編集後記
ディレクター:村上太一(南海放送)
2022年1月にニュース企画で取り上げたのが始まりでした。映像から伝わる玉井さんの人柄の良さ、この令和の時代に人形劇に腹話術。そしてオリジナルのかかし踊り。5分ほどの内容でしたが、その生き様に惹かれ、取材を重ねることにしました。取材を続けることおよそ1年半。会えば会うほど、その人柄に惹かれていきました。ここまで純粋でまっすぐな人は見たことがありません。それに増して人が良い長男の望夢さん。素敵な親子関係にもほっこりしました。
取材の時はいつも笑顔で出迎えてくれます。たわいもない会話から始まり、いつも言葉にしているのは平和と命の大切さ。そして、子どもたちの成長。昨年取材していた頃は、ウクライナ戦争の真っ只中でした。昔、青年団の一員としてキーウを訪れており、ウクライナで戦争が起きている話になると悔しい表情をしていました。「夢も喜びも生きてこそ」。玉井さんが生きていくうえでテーマにしている言葉です。自死が多い現代の世の中。生きていけば楽しいことがある。子どもたちには、戦争のない世の中で幸せに育ってほしい。そして、命を大切にしてほしい。玉井さんは人形劇などを通じて、この思いが少しでも伝わるようにこれからも続けていくそうです。
これらの芸はすべてボランティア。無償です。人を楽しませたい、役に立ちたいという思いが強い玉井さん。もうすぐで70歳ですが、常に全力で生きる玉井さんを今後も追いかけていきたいです。
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