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兵庫県北部で唯一残っていた映画館・豊岡劇場が、去年8月休館。このまま映画館を無くしてはいけないと立ち上がった人がいました。劇場のパート従業員だった田中亜衣子さん(当時35歳)です。田中さんは3人の娘を持つ母親でもありますが、支配人に手を挙げました。この田中さんの思いに触れ、手助けをする人も。兵庫県立大学で経営を学んでいる4年生の橋本泰樹さんです。
この二人で豊岡劇場の復活に挑戦することになりましたが、二人は経営の素人。復活できるのかは全くの未知数。まずは、復活に向けて動き出していることを周囲に伝えるところから開始。と同時に、豊岡劇場を運営するための組織づくりも進めました。そして非営利の一般社団法人豊岡コミュニティシネマを設立。「みんなでつくる、みんなの豊劇」をスローガンに掲げ、多くの人との連携を打ち出しました。劇場再開の目標は2023年春。ただし、その条件として、個人や法人に有料の会員(サポーター)になってもらい、300万円の資金を達成することを条件にしました。
田中さんが思っていた以上に、協力してくれる人が現れます。「毎日奇跡のようなことが起きています」と田中さんが感じるほどでしたが、資金は思ったようには集まりません。田中さんのやり方を批判する人もいました。このままでは、再開が危ぶまれる状況に…。しかし、年が明けたあたりから、田中さんは手ごたえを感じるようになります。そして2月12日、見事300万円を達成。劇場復活の日を3月25日と決めました。
田中さんは、どうしてここまで踏ん張ることができたのか…それには、理由がありました。夫の栄介さんは、中学校の同級生。二人が初めて一緒に映画デートをしたのが豊岡劇場。そして、夫の栄介さんと見た映画が、その後の田中さんに大きな影響を与えたのでした。映画館復活に挑んだ一人の主婦の涙と笑顔の奮闘記です。
編集後記
ディレクター:藤田貴久
豊岡劇場との出会いは、去年の7月のことでした。当初は、別の取材をするために行った豊岡でしたが、後に支配人となる田中亜衣子さんと出会い、気持ちが変わりました。田中さんにひきつけられたこと。そして、豊岡劇場が復活できるかどうかは、日本が抱える地方の再生と重なる重要な問題だと感じたためです。
見どころは、田中支配人の本音に迫るカメラマン森脇稔の執念です。記者の私は無用でした。田中さん、スタッフの橋本さんからは、全くカメラマンの存在が気にならない、と言われるまでになっています。森脇稔は、豊岡駐在のカメラマンです。豊岡から全国に発信できるこの機会に、豊岡の素晴らしさを訴えようと日々カメラを回しました。
会員第1号が現れた瞬間、目標としていた資金300万円を達成したその場に森脇カメラマンはいました。大雨で呆然とする時も、苦悩の時も、涙の時も、森脇カメラマンは現場にいました。
森脇稔が切り取った豊岡の映像、田中亜衣子さんの本音が、見る者の心を確実にとらえます。
番組情報
豊岡劇場
【住所】兵庫県豊岡市元町10−18
【電話】0796-34-6256
【HP】https://toyogeki.jp/