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熊本市中心部から車で45分ほどの場所にある上益城郡甲佐町・宮内地区。山と清流に囲まれたのどかな集落を豪雨が襲ったのは2016年、熊本地震直後のこと。幸い死者は出なかったものの、当時観測史上4位の大雨により家や道路、多くの田畑が流されてしまいました。加えての高齢化。被害をきっかけに耕作を断念する農家も数多く出ました。
そんななか立ち上がったのが移住してきた佐藤直樹さん(41)。前職の都市計画コンサルタントで訪れた甲佐町に魅了されたのがきっかけです。佐藤さんは、住民の大半が70歳以上の宮内地区にとって貴重な若手。フットワークが軽い佐藤さんは「地域の孫」として愛されています。
災害後、耕作放棄地が増える現状を見かねた佐藤さん。町を元気にするツールとして、鳥獣被害が少なく国産品は希少という「ぶどうサンショウ」を思いつきます。住民に協力を呼びかけ生産者を募り、2019年から栽培をスタート。そのほとんどが60、70代。「栽培のノウハウがほぼなく手探り。だからこそ、みんなが自主的に栽培方法を研究して楽しんでいる」といいます。またサンショウ栽培だけでなく、加工品への取り組みにも挑戦中。地元のカフェなどもこの取り組みに賛同、サンショウを使ったランチメニューや加工品などを始めました。
サンショウ栽培が軌道にのりはじめた反面、新たな課題も。それは「苗木不足」。生産地となるためには本数を増やすことは絶対条件。佐藤さんたちは「苗木作り」への取り組みも始めます。「まだまだスタートラインに立ったばかり」と笑う佐藤さん。夢は宮内地区をサンショウ産地へするだけでなく「同じように困っている地域にサンショウ栽培のノウハウを届けたい」…。その理由は「そのほうが面白うそうだから」。地元住民と取り組む佐藤さんの「ぶどうサンショウでの町おこし」を追いました。
編集後記
ディレクター:久保田泰代(熊本放送)
今回感じたのは「知らないことばかり」の取材だったこと。
取材先の熊本県甲佐町宮内地区は、熊本市中心部から車で約45分。さほど遠くはないものの これまで訪れることがほぼなかった場所でした。地区内にはコンビニエンスストアはもちろん、自動販売機、信号すらない。集落も離れ離れで人とすれ違うこともほぼない、まさに「自然豊か」な山間の町。。。というのが最初の印象。しかし。通い始めると「井戸端会議」がはじまる辻があったり、撮影をしていると声をかけ地区の話をきかけてくれたり、差し入れをくださったりと、住民の温かさにふれることばかり。縁側で話し込んでしまうこともしばしば。主人公の佐藤直樹さんが「魅了されて移住を決めた」というも納得の地域でした。
2016年。熊本地震直後にこの地区を襲った、当時観測史上4位の豪雨。恥ずかしながら同じ県にいながら知らず。さらに、今なお復旧の途中であること、形が戻った田畑が耕すことが難しい状態であることも初めて知りました。
町に元気を戻すために佐藤さんが目をつけた「ぶどうサンショウ」。これも初めて知ったもの。希少価値は高いが栽培方法が確立していない。そんな植物の栽培を始めることに地区の人は不安よりもやりがいを感じていることには驚きもありました。
生産者だけでなく、飲食店や加工品屋までも巻き込んでの「ぶどうサンショウ」の町おこしは、まだまだ広がりをみせています。調味料や弁当、スイーツに挑戦中。「ぶどうサンショウ」の可能性の高さには驚かされることばかりでした。
佐藤さんが常に口にしていたのが「日本中の田舎がもっと楽しく豊かになること」。サンショウ栽培を宮内地区で独占するのではなく、ノウハウを確立して日本中に広げたい。佐藤さんの夢が叶う日はそう遠くない気がします。
番組情報
佐藤直樹さんのInstagram
アカウント:@hijet6243
URL: https://www.instagram.com/hijet6243/