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福井県の中心部から車で約1時間、9割が森林に囲まれた池田町。人口は約2300人、高齢化率は全国平均を大きく上回る45%…電車の駅もコンビニもありません。実は今、この町に移住者が増えています。令和に入ってからだけでも60人が池田町にやってきました。廃校になった小学校をリノベーションしたカフェを営む秋元郷佑さん(38)・美奈さん(38)夫婦は、2014年大阪から移住。カフェには小さい子どもを連れていても安心して過ごせると、パパやママがたくさん訪れます。
カフェだけでなく、親子が心を開放できる居場所をつくろうと始めたのが、さとやま子育てコミュニティ「いけだのそら」。活動は週に2回、町の内外から親子が集まります。自然の中で遊んだり、豊かな食にふれたりしながら池田の暮らしを楽しみます。大切にしていることの一つが“地域の人との交流”です。農家のおじいちゃんに田植えを教えてもらい、子どもたちは大はしゃぎ!元気な子どもの姿に頬がゆるむ地元の人たち…さらに、町の祭りには子どもたちが店を出し一緒に盛り上げます。閉鎖的になりがちな小さな町にゆるりと溶け込み、
少しずつ人の輪を広げています。
2021年東京から移住してきた米村智裕さん(37)。米村さんもまた、田舎の良さを生かして子どもの心を育む場所をつくろうと奮闘中。築70年の古民家を自らの手で改修し、劇や音楽会など芸術が楽しめる空間にしたい…古民家改修に興味を持った学生や都会から演奏家がやってきて、新たなにぎわいが生まれています。
地方が直面する課題は深刻化する一方ですが、この町にはにぎやかな声が響き、笑顔があふれています。子どもたちにとって田舎で過ごす日々が楽しい思い出になれば、将来地方の問題に目を向けられる人になってくれるはず。地方の価値に気づいた移住者たちの地道な活動が、地方を再生する希望になる…いけだのそらの日々を見つめます。
編集後記
ディレクター:奥村 祐加(福井放送)
ご近所付き合いの希薄化…リモートの普及…。世の中はどんどん便利になるけれど、どこかさみしさを感じていたときに心惹かれたのが、今回取材した「いけだのそら」でした。普段は違う学校に通う子どもたちが自然の中で一緒に遊び、地域の人たちから伝統料理や暮らしの営みを学び、いきいき過ごしています。
「いけだのそら」を立ち上げた秋元郷佑さんは “田舎で過ごす日々が楽しい思い出になれば、将来地方のことを考えられる人になるはず”と話します。ただ単に親子で楽しめる居場所をつくっているのではなく、地方が残っていくため、未来の種となる思いを胸に活動しているのだと私自身の意識が大きく変わりました。子どもたちに何をしているときが1番楽しいか尋ねると、「池田で遊んでいるとき!」と元気に答えてくれ、秋元さんの願いは小さな心にちゃんと届いているんだと実感しました。
「いけだのそら」の活動で出会ったのが東京から移住してきた米村智裕さんでした。築70年の古民家を自らの手で改修し、地域の人や学生、都会の演奏家など、幅広い人を巻き込み奮闘している姿には毎回驚かされました。
池田町はショッピングセンターもコンビニも電車の駅もない、決して暮らしやすいとはいえない町です。しかし、頼もしい移住者たち、そして子どもの輝く笑顔であふれており、ただの田舎ではない希望ある町だと取材を通して強く感じました。情熱を持って活動する人たちがいる町にとてもパワーを感じます。自然の中で過ごすこと、地域の人や、いろいろな価値観を持つ人と関わること…特別なことではありませんが、そんな当たり前が失われつつある時代です。私も地方に住む1人として、地方の役割や価値について考えさせられた1年間でした。
番組情報
いけだのそらHP
【URL】https://ikedanosora.themedia.jp/