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長野市郊外のリンゴの産地、長沼。農家の渡辺美佐さんは、およそ100本のリンゴの木を育てています。10年ほど前、義理の父から畑を継ぎ、順調に農作業の経験を積んできましたが、大災害をきっかけに状況は一変。2019年10月、長野県を襲った台風19号。千曲川の堤防が決壊、美佐さんの暮らす地区は全ての世帯が全壊。変わり果てた我が家を目の当たりにして「もう住むことはできない」と考えた美佐さん。支えてくれたのは、全国から駆け付けてくれたボランティアでした。一日一日、元の姿を取り戻していく自宅の様子を見て、自らも復興に向けて歩み出す決意をします。
地区の主要な産業であるリンゴも壊滅的な被害を受けました。川から流れ出した泥に覆われ、息ができなくなっていたっていたリンゴの木を、一刻も早く救う必要が…。美佐さんは地元の農家を集め、JAなどが組織した農業ボランティアとともに畑の復旧に駆けまわります。
さらに、避難生活で離れ離れになった地区の住民をつなぐための活動も開始。立ち上げたのは、津野女子会。女性の目線で自由にアイデアを出し合いながら、地域を盛り上げる活動を続けています。「この地区は過疎や高齢化で、災害が起きなくても、いつか限界集落になると思っていた」と話す美佐さん。住宅の再建をあきらめて地区の外に出ていく人もいるなか、自宅のリフォームを終えて新しい生活をスタート。災害を乗り越え、地域の復興のために奔走する、美佐さんの3年間の軌跡を追いました。
編集後記
ディレクター:宮下滋(信越放送)
2019年10月の台風19号による災害発生時から、長野市の長沼地区の取材を続けてきました。千曲川の堤防が決壊して、家屋も畑も壊滅的な被害を受け、発災当初は、住民から怒りをぶつけられる場面もありました。それでも何度も通ううちに受け入れていただき、多くの方々との出会いがありました。
長野市と合併する前は一つの村だったからか、住民同士のまとまりがよく、復興に向けて前向きに進む人たちが多い長沼地区。なかでも主人公の渡辺美佐さんは、明るく活発な人柄で周囲を
巻き込む姿や、感極まるとすぐに泣いてしまうところが印象的の、
魅力いっぱいの女性でした。
「この地区は災害がなくても、いつかは限界集落になると思っていた」という美佐さん。取材で最も印象に残っているのは、最後のインタビューの「もう災害のことは一区切りにして、前向きにいきたい」という言葉です。
大きな自然災害に見舞われた地域では、何年経っても完全な復興というものはないのかもしれませんが、「災害を引きずらず、自分たちの地域は自分たちで守る」という美佐さんの固い決意に、強く胸を打たれました。