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シャリシャリした食感と甘さ、そして冷蔵庫に丸ごと入るコンパクトさが人気の「小玉スイカ」。40年以上前、和歌山県印南町(いなみちょう)で栽培がスタート。
近隣の2つの町でも長年、作られてきました。しのぎを削ってきた3つの地区に転機が訪れたのは、2014年。3つのJAが合併し「JA紀州」が誕生したときのこと。その年、スイカ担当の営農指導員となったのが、JA紀州の大野隆之さん。「スイカで農家さんにもうけてもらいたい、スイカで地域を活性化させたい!」…そんな思いを持っていましたが、当時は、年によってスイカの出荷量にばらつきがある不安定な状態。「JA紀州」として、小玉スイカの産地復活を成し遂げるためには、出荷量の拡大・安定、品質の向上が必要。そして何より不可欠だったのが「ひとつの産地としての意識統一」でした。
JA紀州ブランドとして力を合わせよう、日本一の生産量を誇る花・スターチスの後作としてスイカ栽培を推進しようという大野さんの提案に対し、当初は各方面から猛反発。粘り強く説明を続けた結果「お前がそこまで言うんなら、やれるとこからやってみよか」と少しずつ動き始めます。大野さんがスイカ担当となってわずか8年、小玉スイカの販売額は約1億円もUPしました。
もともと農業とは縁遠く、仕事を始めた当初は、知識・経験の少なさ、生産者の期待や要望に応えられない無力感など、大きな壁にぶつかってばかりだったという大野さん。しかし、そんな大野さんに手を差し伸べてくれたのも、厳しく優しく指導してくれる、地域の先輩生産者たちでした。
産地の力を高め、しっかりもうけられる農業、そして地域の未来を支える子どもたちが夢を抱ける農業にすること。これこそ営農指導が果たせる恩返し…。人のつながりと情熱が詰まった、小玉スイカ…生産者とJA職員の奮闘を見つめます。
編集後記
ディレクター:澄田憲親(プロフィット)
「多くの力が集まれば、思いは形にできる」―。まさにそんなことを感じた取材でした。
それぞれが歴史ある小玉スイカの産地として、しのぎを削ってきた3つの地区。近年は生産者の高齢化もあり、作付け自体が減少する中、2014年に3つのJAが合併し、JA紀州が誕生。しかし、そう簡単に長年のライバル関係がなくなるわけではありません。そんな激動のタイミングで、営農指導員として小玉スイカを担当することになったのが、大野隆之さんでした。
生産者たちに大野さんの印象を聞くと、口をそろえて「ゆるい」「気がついたらそこにいる」などの答えが返ってきます。そして、そう話す生産者の表情は、決まって笑顔。”仕事上のパートナー”という範疇には収まらない、近い存在なんだなと感じました。
大野さんは「この地域の生産者たちは、若いJA職員を育てようという意識が本当に強い」と話します。地元出身ではなく、農業の知識も経験も薄かった自分も、叱られ、励まされながら、生産者に育ててもらったといいます。「知識や経験は先輩生産者にはかなわない」と謙遜する大野さんですが、最新の技術や市場の動向など、営農指導員だからこそ出来ること、出来る恩返しもあると話します。
小玉スイカの産地復活に向け、大野さんが行ったのは、強いリーダーとなってぐいぐい引っ張るのではなく、生産者の誇りや培ってきたノウハウをうまく束ね、地域全体の力になるよう方向付けること。当初は反対していた生産者たちも「お前がそこまで言うならちょっとやってみよか」と、次第に力を合わせ始める。大人たちがリアルタイムで描く未来予想図をそばで見て、地元で農業を営むことに夢を抱く子どもたち。
「スイカでもうけ、笑顔あふれる産地であり続けるように」―。
誰もが望みながら、難しいと尻込みしてしまいそうな壁を、正面から力を合わせて乗り越えた産地の姿に、私自身「いいなぁ」と勇気づけられました。VTRをご覧のみなさんが、少しでも元気になれるような作品になっていれば幸いです。
番組情報
- JA紀州