#309 がれきに花を咲かせましょう ~震災オブジェと子どもたち~

2022年07月23日(土)05:20~05:50(テレビ朝日 放送) 山形放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

山形県で海の漂着ゴミを使いアート作品を作っていた犬飼ともさん(当時32)。2011年の東日本大震災で一念発起、津波で被災した宮城県石巻市をボランティアで訪問。避難していた子どもたちと一緒に、津波で流れ着いたがれきを使ってアート作品を作りました。日本中が暗い雰囲気に包まれるなか、希望の光に変わると確信したからです。

完成した約200個の作品は、避難していた渡波(わたのは)小学校の名前にちなみ「ワタノハスマイル」と名づけられ、全国約50か所のほかイタリアでも展示、大きな反響を呼びました。
この作品に元気づけられたのは、作品を見た大人たちだけではありません。それは、1か月以上にも及ぶ避難所生活で、大きなストレスを抱えていた子どもたち。その子どもたち自身が、一生懸命作品を作ることによって、ものづくりの喜びを感じ、元気づけられていたのです。

あれから11年、子どもたちは今、20歳を過ぎました。どんな気持ちで避難所生活を送り、どんな思いでがれきアートを作ったのか…大人になった今だから伝えられることがありました。

ともさんは震災から10年になる去年、山形市に子ども向けの美術教室をOPEN。「震災の時、渡波(わたのは)の子どもたちからたくさん学ばせてもらった。それを今の子どもたちに返していきたい」。

今年5月、ともさんは教室に通う子どもたちに、初めてがれきアートを見せました。子どもたちはどんな反応を見せたのでしょうか?そして今、ともさんが子どもたちに伝えたい思いとは?

編集後記

ディレクター:伊藤和幸(山形放送)

2011年の東日本大震災で、避難していた子どもたち12人が、震災がれきを使って制作したアート作品が「ワタノハスマイル」です。宮城県石巻市の渡波(わたのは)小学校で約200個の作品が出来上がりました。作品には全て顔が描いてあり、タイトルと説明がついています。1つ1つが非常にユニークで、面白く、楽しい作品ばかりです。
デッキブラシが髪の毛になっている「ゴミせんし」は、<よわい。人は助けない。カラスはきらい>。タンスの引き出しが顔の「トッシンくん」は、<人なつっこいけど怒るとこわい。怒りだすとトッシンしてくる。海を見ているときは怒らない>。扇風機のカバーと浮標(ブイ)で作られた「せんぷうきパトカー君」は、<竜巻を起こし犯人を捕まえる。美人によわい>。新しい命が吹き込まれたがれきのオブジェには、子どもたちのたくましい創造力が詰まっていました。
作品のタイトルと説明をつぶさに見ていくと、制作した子どもたち自身の気持ちや、周囲の大人たちの振る舞いが投影されているのではないかと、推察してしまいました。
指導したのは、山形からボランティアに訪れた犬飼ともさん(当時32)。震災前、山形の海辺に漂着したごみを拾い集め、それを使って作品を制作していた造形作家です。被災地の惨状を目の当たりにし、ともさんは「とても作品を作ることはできない」と、あきらめかけました。しかし、グラウンドに流れ着いた大量のがれきの中から、子どもたちが遊び道具を見つけ出し、たくましく遊んでいる姿をみて「やっぱりやってみたい!」と考え直したそうです。
ともさんは去年、山形市に「アトリエスマイル」という子ども向けの美術教室を開きました。「震災の時、渡波(わたのは)の子どもたちからたくさん学ばせてもらった。それを今の子どもたちに返していきたい」という思いからです。教室では元気で個性的な子どもたちが、ユニークな授業を自由に受けています。目を輝やかせ、ワクワクしながら授業に臨む子どもたちの姿は、まさに「希望の光」。ものづくりって素晴らしい!!

番組情報

アトリエスマイル
【HP】https://www.ateliersmile.jp/

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