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静岡県富士宮市に住む、清しお子さん(68)。難病・ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者です。病状が進行すると、人工呼吸器をつける選択を迫られますが「家族に迷惑をかけたくない」と、約8割の患者が、呼吸器をつけない選択をします。清さんは呼吸器をつける選択をしましたが、一緒に暮らす夫の介護の負担を減らしたいと、自分が入居する施設を探しました。しかし、24時間体制で医療的ケアを行う施設は非常に少ないという現実を知ります。
そこで清さんは「ないなら自分でつくろう!」と決意。重い病気を患っていても自分らしく暮らせるグループホーム「ケアサポート志保」を完成させました。多くの人が見学に訪れ順風満帆だと思っていたある日、初めての入居者を迎えました。しかし清さんはスタッフの技術が気にかかります。スタッフの教育に力を入れるため、清さんは自分が練習台となったり、研修会を開いたりと、入居者のために奮闘。患者だからこそわかる清さんの思いはスタッフにも伝わり、レベルを上げていきます。
またある日、施設を利用するか悩んでいる患者と母親が見学に訪れます。清さんは、心配そうに話す母親を安心させようと、施設での暮らし方について語りました。清さんの優しさと強さに触れ、ひとりで介護をする母親は、ショートステイという形でグループホームに娘を預けることを決心。
「いずれ自分も重症患者になるかもしれない」…清さんはそう思いながらも「逝き方」ではなく、「生き方」を考える患者が増えることを願っています。希望と現実のはざまで生きる、清さんの根源にある「チカラ」とは…。
編集後記
ディレクター:植田麻瑚
「これが成功すれば、必ず誰かがどこかで同じような施設を作ってくれる。
それが一番の願い」
私が清さんと初めて出会ったのは、2021年2月。グループホームの建設が本格的に始まったころです。笑顔がとても印象的で、難病患者だということを忘れてしまうくらいポジティブな方だなという印象でした。それは今も変わっていません。
「私の気持ちを理解してくれる人がたくさんいる。」
「助けたくなっちゃうんだよね。明るいから。」
グループホームの建設現場で、清さんと設計事務所の社長が交わした言葉です。
清さんの思いは、多くの人を勇気づけチカラに変えているのだと、改めて感じました。
施設が完成し、スタッフと仲良くアットホームな雰囲気に包まれている施設でしたが、
初めての入居者を迎えた際に、清さんの顔色が変わりました。スタッフに厳しく指導をしたり、会議で危機感をあらわにしたりと、施設に本気で向き合っているのが伝わる場面でした。
私の祖父は、清さんと同じALSを患っていました。発症時すでに高齢であったことなどから、気管切開手術はせず、その数年後に亡くなりました。
私は当時高校生で、祖父の本当の思いを聞いたことはありませんでした。しかし、祖父が生きている間に清さんが作ったような施設が近くにあり、清さんのような人が傍にいてくれたら、祖父は「生きたい」と思ったのだろうかと、考えたことがあります。
2019年、京都府でALS患者の嘱託殺人事件がありました。
体が動かせず、日々介護される状況に耐えられず、女性患者は安楽死を望みました。
清さんは、「生き方」ではなく、「逝き方」を探してしまう人を減らしたいという思いで、グループホームを立ち上げました。
清さんやその周りの人々を見て、今悩み苦しんでいる患者やその家族に、笑って生きる一生を選んでほしいと思います。また、難病患者や障がい者への理解が深まり、「生きたい」と思える社会になることを心から願っています。
番組情報
ケアサポート志保
【所在地】〒418-0039 静岡県富士宮市野中1044-3
【電話】0544-22-0166
【HP】https://medical-care-shiho.com/contact/