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東京・巣鴨の商店街にあるコミュニティーカフェ・葵鳥(あおどり)。
ここへ集うお客さんやスタッフのほとんどがひきこもりの当時者や経験者、その家族です。
訪れた人たちはリラックスした雰囲気の中で何気ない会話を楽しみます。
このカフェを運営するのが、NPO法人「楽の会リーラ」の
市川乙允(おとちか)さん。ひきこもりの支援活動を始めたのには、あるきっかけがありました。当時15歳だった娘がいじめにより不登校に…。娘の状況を受け止められず、かたくなだった市川さんを変えたのが、不登校親の会への参加。同じ悩みを持つ人たちと話をするうちに、娘と向き合うことができるようになったといいます。
葵鳥へ通う22歳の大石和輝さんは、昨年の11月までほとんど外へ出ない生活を送っていました。人とのつながりが持てるこの場所は「居心地が良く落ち着ける場所」だと話します。
人一倍正義感が強い大石さんは、小学5年生の時にいじめがきっかけで不登校になり、その後、社会とのつながりが持てずひきこもり状態に。精神的に浮き沈みがあり、状態が良くないと一日中布団の中に入ったまま動けなくなることも。そんな時には市川さんやスタッフの人たちに励まされて、葵鳥へ通っています。そうしたなか、大石さんは、市川さん達の役に立ちたいと
葵鳥のチラシなどを印刷するボランティアを始めます。
ある時、大石さんが友人とのトラブルがきっかけでひどく落ち込み、外へ出られなくなってしまいました。ボランティアの日はもうすぐ。大石さんは約束の場所へ来ることができるのでしょうか。そして、その時大石さんの心を大きく動かした市川さんの言葉とは。迷いながらも一歩前へ進もうとする大石さんと、それを見守る市川さん…小さなカフェで出会った二人の心の交流を見つめます。
編集後記
ディレクター:五十嵐友子(フレックス)
「甘えているとか怠けているとか親の育て方が悪いとか、
そういうひきこもりに対する偏見をなくしたい」
初めて会った日に市川さんが話してくれた言葉です。
そんな市川さん達が作ったひきこもりの人たちの居場所は、
ゆったりとした時間が流れ、とても落ち着ける場所でした。
取材に来た私たちを温かく迎えて、気さくに話しかけてくれる
スタッフの人たち、何度か通ううちにカメラを向けさせてくれる
ようになったお客さん…様々な人たちと出会い話を聞くことができました。
葵鳥で出会った大石さんは、初めて取材した時、自分の考えや気持ちを言葉にして話すのがとても上手な青年だと感じました。穏やかで飄々としている大石さんですが、別日にじっくりこれまでの経験について話を聞かせてもらうと、心に深い傷を負っていることを知り、強い衝撃を受けました。そして、現在進行形で迷い苦しむ姿も隠さず見せてくれました。少しずつゆっくりとしか前に進めない、しかし前進したいと思うからこその苦しみでもあります。
いじめ、パワハラ、病気…大石さんや葵鳥で出会った人たちにひきこもるきっかけを聞くと、そのほとんどが自分ではどうしようもないことに傷ついた結果でした。
傷ついた人たちが一時羽を休める場所、それが葵鳥なのかもしれません。
そこに集う人たちの笑顔や苦しみ、優しさなどありのままの表情を伝えられたら…
いつしか制作しながらそう考えるようになっていました。
ひきこもりの人が生きやすい社会は、きっと誰もが生きやすい社会。
全ての人がのびのびと自分らしく生きていける世の中になればと願っています。
番組情報
コミュニティーカフェ 葵鳥(あおどり)
【営業日】毎週水・金曜日の13時~17時
【HP】https://rakukai.com/aodori/cafe/about/
【問合せ先】NPO法人楽の会リーラ(運営団体)
【TEL】03-5944-5730
【FAX】03-5944-5730
【e-mail】info@rakukai.com