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新潟県津南町は長野県との県境に位置し、冬には積雪3メートルにもなる豪雪地帯。この地では15軒の農家が年間130万本45品種のユリを育てています。津南町ユリ切花生産組合長の大口貴裕さんは、父親からユリ作りを受け継ぎ19年、ブランドユリを栽培。たくましい姿はまさに“雪男”。津南町で1990年に始まったユリ生産では、他の産地にない特別な技術が使われています。新品種の試験や品質を保つための会議など、ユリ作りに余念がありません。
貴裕さんの父親たち6軒の農家が1990年に始めたユリ切花生産。資金は農家が自ら捻出しました。カサブランカをはじめとする切り花を東京の市場に初出荷した際、その品質の高さは驚きをもって迎えられました。父親のたくましい姿を子どもの頃から見てきた息子たちの多くが家業を受け継ぎ、今では30代・40代が多く活躍しています。
ブライダルやイベントで重宝されていたユリですが、新型コロナによって需要が減少。そんななか、家庭での需要や規格外の花の廃棄に目を向け、若者でも手軽にユリを楽しめる新たな取り組みを実施。ユリを地元旅館の温泉に浮かべ、訪れた人をもてなす「ユリ風呂」や、ユリと花器をカジュアルに楽しめる「テーブルリリー」の商品開発など、若手のアイデアが広がりを見せています。
販路拡大はもちろん、地元でのユリ活用…県内の高校華道部が開催するいけばな展でも、津南産のユリが作品を彩りました。
先行きの見えない時代、ブランドユリと向き合う、雪男たちの姿に迫ります。
編集後記
ディレクター:竹内ありす(新潟放送)
目で見て、香って楽しめるユリの花。つぼみの状態から飾ると、花開くまでを見守る楽しみがあることを教えてくれます。
そんなユリ切花を作る津南の農家たちは、高い品質を守るためにたくさんの努力を重ねています。たとえば、収穫したユリを持ち寄り、つぼみの色や大きさを見比べて出荷の基準を定期的に見直す会議「目合わせ会」。「これはボリューム不足だね」「これは色が変わりすぎだ」「市場によって好みは違うから、クレームのないように」と忌憚ない意見が飛び交います。生産者にユリ作りについてたずねると、品質の高さを誇りに思っていることが異口同音で伝わってきました。
世代交代を経てクオリティを守り続けるユリ農家。彼らを支えるJA津南町もまた、新たな需要にアンテナを張る若手が情熱を持って活躍しています。新型コロナ禍をきっかけに、県外への販促だけでなく地元でのユリ活用に目を向けはじめました。「高嶺の花のイメージがあるユリを、若い人にもカジュアルに楽しんでほしい」という思いで、生産者の意見を取り入れながらユリ風呂やテーブルリリーなどの取り組みをすすめます。
冬には3メートルもの雪が積もる豪雪地帯、津南町。津南町ユリ切花組合の大口貴裕さんは、地元に居心地の良さを感じて関東からUターンしてきました。幼いころからスキーに熱中し、ユリ作りの仕事が一段落した冬のシーズンは今でもスキーを教える仕事をしています。出荷のピークは朝4時半から夜10時ごろまでユリと向き合い(お昼寝もしつつ)、冬は雪山へ!このメリハリのあるライフスタイルが、雪男のたくましさを作っているのかもしれません。
津南町でのユリ生産は花を咲かせるまでに通常の二倍の時間をかけるため、球根の仕入れには先を見通す力が必要です。先行きの見えないこの時代でも、品質の高さを守り続けながら新たな可能性を探り続ける…… 努力や苦労もどこか楽しそうで、誇り高くユリと生きる津南の雪男たちに注目です。
番組情報
JA津南町
【電話】025-765-4556
【HP】http://www.ja-tsunan.or.jp/
津南町ユリ切花組合
【HP】http://yukibijin-tsunan.com/