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奈良県橿原市にある食堂「げんきカレー」には、子どもたちを支える「みらいチケット」という仕組みがあります。店内のホワイトボードにずらりと貼られたチケットの中から、1枚を取って注文すると、誰でも1杯200円のカレーを無料で食べることができます。中にはチケットをもう1枚取って、おかわりする子どもも。
このみらいチケット、実はほかのお客さんの善意から生まれたもの。会計の際に200円を上乗せすることで、チケット1枚を買うことができます。カレーの代金を支払うついでに、お客さんたちがチケットを買って、子どもたちのためにホワイトボードに貼ってくれているのです。
この仕組みを始めた店長の齊藤樹(さいとう しげる)さんの本業は英会話教室。経済状況によって教育格差が生まれる現実に直面し「誰もがお腹いっぱいになれて勉強もできる場所」を作りたいと思い、3年前に店をオープンしました。評判は少しずつ地域に広まり、今では齊藤さんの思いに共感した企業や農家から、鶏肉やお米などの食材を提供してもらえるように。げんきカレーもまた、多くの人たちに支えられているのです。
今では店を活用して、小学校教師や大学生のボランティアが子どもたちに勉強を教えるなど、学習支援の場にもなっています。勉強を終えた子どもたちにふるまわれる晩ごはんはもちろん、カレー。子どもたちにとってげんきカレーは、学校とも家とも違う、居心地の良い場所。
「地域が当たり前のように助け合うことができる世の中」を目指す齊藤さん。大人たちが、子どもたちのために…思いやりと笑顔があふれる、カレー食堂の物語です。
編集後記
ディレクター:田村信大(ABCテレビ)
大きな鶏肉がごろごろ入って、量・味ともに申し分ないカレーが1杯200円!安さの裏に、他人のために労を惜しまない店長・齊藤さんの努力がありました。
齊藤さんは、面倒見がよくて、よく笑う陽気な「関西のおっちゃん」。おいしいカレーをふるまってくれて、おもしろいトークを交えながら勉強も教えてくれるので、子どもたちからも慕われています。本業の英会話教室との二足のわらじで忙しい日々の合間を縫って地元や大阪の企業を回って協力を呼びかけたり、市長に直談判したりと、子どもたちのために惜しみなく汗をかきます。それでいて疲れた様子は一切見せず、いつも笑顔を絶やしません。
それだけ心血をそそいでおられるげんきカレーが、「将来、なくなればいい」とおっしゃったのには驚きました。齊藤さんが子どものころには、げんきカレーのような場所は当たり前のようにあった環境だといいます。近所の人が「うちでご飯食べていき!」とよその子にご飯を食べさせたり、上級生が勉強を教えたりするのが当たり前だった昔。「地域で子どもたちを見守るということが当たり前になれば、子ども食堂もいらなくなる」というのがお話の真意でした。
時代とともに地域の結びつきが薄れ、最近では、大人と子どもとの間に溝ができてしまったように感じます。その溝を埋めてくれるげんきカレーのような存在が、いまこそ必要とされているのかもしれません。
番組情報
げんきカレー【HP】http://sp.raqmo.com/gennki200/
子ども食堂 ひみつ基地【facebook】https://www.facebook.com/childrenscafeteria/