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新潟県阿賀町の山奥にある室谷地区には、100年以上活動を続けている室谷青年会(会員数11名)があります。阿賀町役場に勤める副会長の清野和幸さんは、カレーの香辛料となるコリアンダーを栽培しオリジナルのレトルトカレーを作り、室谷の特産品として販売することを考えました。きっかけは、新型コロナの影響で地元の行事がなくなり、青年会の収入が減ったため。別名カメムシソウともいわれるコリアンダーは、独特の匂いを放ちます。秋、「臭い!臭い!」と文句を言いながら成長したコリアンダーの種を収穫しました。
レトルトカレーの制作には新潟市内の福祉施設“ラグーン”が協力しています。施設に併設するカフェでは“スパイスカレー”が人気で、ラグーンでは以前からレトルトカレーを販売したいと考えていました。今回、清野さんから依頼を受けて、レシピの提供はもちろん、コリアンダーの種蒔きやパッケージ制作まで一緒に行いました。施設に通う、しゅんすけさんはパッケージに使用されるイラストを担当。レトルトカレーは“農福連携” カレーとして販売することに。
昔、林業を生業にしていた室谷では、今でも12月に山の神を祭る“十二日講”と言われる伝統行事が行われています。青年会の若者が夜中に神社に籠り、川で身を清めた後、餅をついて町内に配ります。新型コロナ感染防止のため、室谷ではお祭りをはじめ様々な行事が中止となっていましたが、青年会は伝統の灯を消してはならないと、今回、神事だけ執り行うことにしました。人と人との絆は、新型コロナの影響でますます薄れています。清野さんは、地元ならではのレトルトカレー作りを通して故郷を盛り上げ、持続可能な青年会の在り方を模索しています。
編集後記
ディレクター:大沼祐貴(新潟放送)
新潟県の中でも阿賀町は雪の多く降るエリアですが、中でも山奥に位置する室谷はさらに雪深い集落です。今回の取材で向かった際にも1m以上雪が積もり、除雪車の通った後でなければ自動車を運転することが出来ません。また、周辺にはコンビニやスーパーがないため、週に1回、一週間分の食材をまとめて買い出しに出かけ、冷凍庫で保存しながら生活をしています。
一見すると不便なことが多いようですが、そんな集落だからこそみんなで寄り添いながら生活をしています。1年を通して祭りやイベントがあると、集落の子どもからお年寄りまで総出で盛り上がっています。その祭りの中心となるのが、室谷青年会です。つまり室谷集落にとって、青年会とはなくてはならない存在なのです。
青年会のメンバーは、消防士、公務員、土木業など多種多様。しかも、年齢差は10歳以上。なのに、定例会などで集まれば皆ざっくばらんに談笑しています。子どものころからお祭りなどで接しているからか、まるで兄弟のよう。時には、青年会メンバーで旅行に行くこともあります。
レトルトカレー完成に向けて、コリアンダーの種取りや乾燥作業など、全く経験のない作業をみんなで談笑しながら試行錯誤して作業する姿は、まるで文化祭の準備風景のようでした。彼らにとって室谷青年会とは、自分の職場や家庭に続く第3の居場所なのだと思います。
青年会副会長の清野和幸さんは今年町役場を退職して阿賀町に密着した商社に転職するという新たな一歩を踏み出しました。商社では、青年会の作るスパイスカレーなどの商品を取り扱っています。和幸さんの挑戦は、やりたい仕事だという理由の他に、青年会という場を絶やしたくない、という意思が感じられました。
12日講などの室谷ならではの行事や、慣れないスパイス作りに青年会一丸となって向き合う姿を通して、青年会の温かみのある雰囲気を感じていただければ幸いです。
番組情報
奥阿賀コンビリー(株式会社山から)
【電話】0254-92-7100
【HP】http://combirie.jp
就労継続支援施設B型ラグーン
【HP】http://suimeikailagoon.web.fc2.com