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東京・世田谷区にある存明寺が開く「ぞんみょうじこども食堂」。住職の奥さん、酒井浩美さんの提案で、6年前にスタートしました。月1回の開催日には、地域の子どもたちをはじめ、保護者や高齢者など、多い時では約100人もの人が集まる盛況ぶり。ここには大人気のメニューがあります。開設当初からずっと続けている看板メニュー『キーマカレー』…。大好きなキーマカレーをみんなで一緒に食べる、そこには笑顔が広がり、地域のつながりができていました。
地域のお母さんたちやお寺の御門徒さんたちなど、ボランティアスタッフに支えられ輪を広げていったこども食堂でしたが、新型コロナウイルスの影響で、運営自体を自粛せざるを得ない状況に。コロナ禍においても、子どもたち、地域の人々とのつながりを途切れさせたくない…その思いを一心に、浩美さんはテイクアウトの形でキーマカレーを提供することを決断しました。みんなで一緒に食べることはできなくなってしまったけれど、テイクアウトに来ることで直接顔を合わせることができる、持ち帰ったキーマカレーを食べればこども食堂で過ごしたあの楽しい時間を思い出すことができる…キーマカレーを通じてみんなの心はつながり続けていました。
どんな状況でも、つながりを続けようとするたくましさ、みんなで食べることができないならテイクアウトで対応するという柔軟さ、その中から新たな発見やつながりを作り出していく力強さ…。キーマカレーで地域の人々の心をつなぐ、お寺の子ども食堂の物語です。
編集後記
ディレクター:鈴木亜奈美(フレックス)
「夢はありますか?って聞かれることがあんですけど、この『ぞんみょうじこども食堂』が夢の形なんです。もう夢はかなっているんですよ!」取材最終日、浩美さんが笑顔で話してくれました。「ぞんみょうじこども食堂」をきっかけに、地域の人々がつながり合っていくことが、自身にとっての喜びであり生きる希望なんだとおっしゃっていました。
浩美さんも住職も、子どもたちのことを全員、名前で呼んでいます。名前を呼び合い、相手との距離を少しずつ近づけて、この場所に居てもいいんだという安心感をもってほしい…一人ひとりとどれだけ深い関係が築けるかということを大事にしていました。私も少しでも子どもたちとの心の距離を縮めたいと思い、必死で全員の顔と名前を覚えました。取材期間2~3回しか会えませんでしたが、回を重ねるごとに、つながりの輪に加われた気がしました。お母さん方も快く取材を受け入れてくださり嬉しかったです。
取材をスタートした2月中旬の時点では「4月くらいにはまずは少人数制で、またお寺で食事をできるようにしたい」と浩美さんがおっしゃっていました。私も、そうなったらいいな!という願望で勝手に描いていたストーリーがありましたが、感染状況はどんどん拡大…三度目の緊急事態宣言が発令される事態に。外出の自粛で人と会う機会も少なくなり、人とのつながりが希薄になりがちな今、テイクアウトの形でキーマカレーを提供し続けることで、ここでは地域の人々のつながりが絶えることはありません。でも、やっぱりお寺の中で食事をすることをみんな楽しみにしています。早くコロナが終息し、またみんなが楽しくおしゃべりをしながらキーマカレーを食べられる日がくることを願っています。