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新型コロナウイルスの影響で、モノづくりの町・愛知の町工場は受注が減り収入が激減しました。意気消沈の製造業を元気づけようと開催されたのが「くだらないものグランプリ」です。製造業の会社が持つ高度な技術力を駆使して、渾身の「くだらないもの」を出品しあい、「くだらね~」と笑い飛ばしてコロナ禍を乗りきるのが大会の主旨です。愛知を中心とする中小零細企業20社が参加しました。ゴム製の将棋駒、鬼瓦の形をしたヘルメットなど、心底くだらないものばかりが集まりました。
出場した会社のひとつ、愛知県一宮市のマルハチ工業は、従業員7人の町工場。旋盤など金属部品の加工や販売を手掛ける小さな金属商社です。この会社が「くだらないものグランプリ」に出品したのは、子どもがトイレットペーパーをガラガラと回して出す“いたずら”を阻止するための道具、「トイレのとめこさん」。発案者は3代目社長の田中好江さん(35)。病気で亡くなった父親から5年前に会社を受け継ぎました。母親としての悩みから思いついた「とめこさん」。加工の方法は、高度な技術を持つ職人にとっては「くだらない」くらい簡単。ところが大会に参加したことで、この「くだらないもの」が、多くの人たちの悩みを解消する「優れもの」であることが判明します。「とめこさん」を知った福祉施設から「使ってみたい」と依頼を受けたのです。福祉に役立つのであれば、と「とめこさん」の商品化に向けて奮闘する田中社長。第二子の出産をはさみながら、開発を続けます。田中社長の熱意の背景には、彼女の生い立ちが関わっていました。
編集後記
ディレクター:原田裕理恵(メ~テレ)
「母に障害があるので、いつかは福祉に関わる事がしたい。」初めて取材した時からそう語っていた田中好江さん。ニュースで「くだらないものグランプリ」の様子を放送したあと、障がい者施設から電話が来たと報告を受けた時、本当にうれしそうで、こちらまで胸がいっぱいになったことを覚えています。
「とめこさん」の製作で悩んだ時、周りの工場や「くだらないものグランプリ」の参加会社が加工を手伝ってくれたり、相談に乗ってくれたりと、それまでなかった“町工場の繋がり”ができていました。好江さん1人ではできなくても、町工場の技術と知恵があれば作り上げることができます。好江さんの普段の真面目さや、ものづくりへに対する思いの強さを知っているからこそ、「何とか助けたい!」と町工場の人たちは惜しまずに力を貸していました。その関係は、本当に素敵だなと感じました。
取材中、好江さんは「次はこんなものを作りたいんです!」と〝とめこシリーズ〟を作る計画も話してくれました。好江さんは、障がいのある人だけでなく、障がいのある人を支える人たちへの感謝の気持ちがとても強いと感じました。好江さんの夢は、まだまだ始まったばかり。“くだらないもの”を人々の役立つものにするために、好江さんはきょうも夢に向かって進んでいると思います。
番組情報
マルハチ工業(株)
【電話】0586-86-2880
【HP】https://maruhachi-kk.com/about/