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宮崎県宮崎市にある「くるま工房くろぎ」。代表を務める黒木順二(くろぎ・じゅんじ)さん(57)が2002年に創業した自動車整備工場で、妻の明余(あきよ)さんと一緒に切り盛りする小さな会社ですが、ある業界の人の間ではちょっと知られた会社です。その業界とは「キャンピングカー」。黒木さん自身キャンピングカー歴30年のベテランオーナーで、その腕を頼って全国各地からキャンピングカーの改造・修理の依頼が入ってきます。しかし、そんなくるま工房にも新型コロナウイルスの影響は大きく、修理依頼や車検などの依頼がめっきり減ってしまいました。
そんな中、新たな仕事依頼が入ってきました。宮崎の老舗旅館が、創業当時から愛されてきた名物のハヤシライスを売るためにキッチンカーを作ってほしいというのです。「多くの人に愛されてきた味を守るため」と語る旅館の女将さん。新たな挑戦を決心した女将さんが納得する車を作ることは出来るのか!?
さらに、「人にやさしいくるま工房」をキャッチコピーに掲げるくるま工房では、車椅子の人も乗り降りから運転まで1人でできる特殊車両の製作もおこなっています。「私たちができる障がい者の自立支援はこれしかないんです」と語る黒木さん。その言葉の裏には、くるま工房の設立のきっかけにもなったある親子との出会いがありました。
妻の明余さんと、「10年後には仕事をリタイアして、キャンピングカーで日本一周一筆書きをしたい」と夢を描く黒木さん。車づくりを通して、思いやりを届けようと奮闘する小さなくるま工房に密着しました。
編集後記
ディレクター:濵田 紘仁
2020年8月から2021年1月まで約半年間の取材期間で、一番記憶に残っているのは主人公 黒木順二(くろぎ・じゅんじ)さんの妻 明余(あきよ)さんの笑い声です。黒木さんの仕事に対する姿勢は、同じものづくりを生業とする人間として「見習わなければ!」と思うほど真摯で、自分の仕事を愛する真面目な方ですが、妻の明余さんは常に明るく、私たち撮影スタッフにも気さくに声をかけてくれ、いつもジュースやコーヒーをいただいていました。くるま工房を立ち上げたばかりの頃の話を伺うと、「夫はいつも忙しく、土日も働いていて、子どもの行事に来たことはなかった。休めるようになったのはつい最近ですよ」と、ニコニコ笑いながら話してくれました。真面目で実直な黒木さんと明るく元気な明余さん。そんな2人だからこそ、今では全国にお客さんを持つ自動車整備工場へと成長したのだと思います。
そして、車椅子ユーザーのために作っている特殊車両も、会社の立ち上げ当時から現在まで約150台を製作してきました。さらに、くるま工房は車椅子ユーザーの運転免許取得の時からサポートしており、自動車講習所に通う際にも自分の車で講習を受けられるように手助けしています。また、車を購入した後も「ハンドルの位置を1cmズラしてください」など、どんな些細な修理・整備も引き受けます。企業は利益追求が求められますが、儲けよりも自分の思いや心意気を優先する黒木さんの姿勢は、これまでにも様々な会社を取材してきましたが、「こんな会社があったのか!?」と驚かされました。
私はこの取材を通して、「自分の仕事は誰のための仕事なのか?」ということを再確認させてもらいました。この番組をご覧になった皆さんにも、黒木さんの姿を通して、改めて「仕事」とは何なのか?を考える時間になればと思います。
番組情報
有限会社 くるま工房くろぎ
【住所】〒880-0201 宮崎県宮崎市跡江2624番地
【電話】0985-62-3711