#245 志野さんの塩 ~百の笑いが響く~

2020年12月19日(土)(テレビ朝日 放送) 福井放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

生まれ育った町を離れ、『移住』という選択をする人は少なくありません。

今回の主人公・志野佑介さん(37)も2017年に千葉県から福井県福井市に移住しました。越前海岸沿いにある人口およそ400人の小さな集落です。目の前に広がる雄大な海や透明度の高い海水に魅力を感じ、志野さんはこの町で生きていくことを決めました。

志野さんが新天地で始めたのが、塩づくり。廃墟となっていた工場を製塩所に作りかえたほか、塩を作るための釜戸は、志野さんが慣れない手つきでレンガを組み立てて1から手作り。目の前の海からポンプで釜戸に海水を吸い上げ、2000リットルの海水を4日間かけて煮詰めていきます。千葉県の塩職人の元に習いに行きましたが、福井での初めての塩づくりは手探りの連続です。越前海岸の海水からできる天然の塩は、甘味もあり、滋味深く、海のパワーが詰まった美味しい塩に仕上がります。塩の名前は、「百笑の塩」。東京農業大学を卒業し、千葉県で大規模農場を経営していた志野さんは、百の仕事ができる百姓を目指しています。塩の名前には、この思いが込められています。

塩づくりだけにとどまらず、塩をメインにしたイベントも開催し、県内の飲食店が百笑の塩を使ったメニューを考えました。イベントには多くの人が訪れ過疎化や高齢化が進む集落が賑わいました。塩づくり1年目にして、すでに大手企業から声がかかった志野さんの塩。野菜の味を引き立てると評価され、キリンビールのビアレストランの期間限定メニューで提供されたのです。

「塩は何にでも使われるため、塩を作れば、いろいろな人とつながっていけるのではないか」と思い、始めた塩づくり。その思いの通り、百笑の塩と志野さんのサポーターがたくさんできました。製塩所は学びの場にもなり、地元の中学生も塩づくりを体験。ふるさとの良さを再発見します。

海に惚れ、地域に惚れ、人に惚れた男性によって集落が少しずつ賑わい始めています。明るく優しく、そして熱い思いで精力的に活動する志野さんを通して、多くの地方都市が抱える過疎高齢化という課題を解決するヒントや、豊かな生き方を感じて頂けたら幸いです。

編集後記

ディレクター:山田恵梨子(福井放送)

飾らず、サービス精神が旺盛で、なんてやわらかい方なんだろう。これが志野さんの第一印象でした。初めてお会いした時に案内してくれたのが廃墟となっていた工場でした。
この工場が製塩所になるのですが、当時、窓はガラスがない枠だけになっていたり、廃材が山積みになっていたり・・・ここから改装や片付けをするのも大変な作業だなと思いました。目の前に広がる雄大な海を見ながら、「ここの景色が最高なんですよ~!!!」と話す志野さんの瞳は少年のようでした。私も、この工場が、そして志野さんがこの集落でどのように歩んでいくのかが楽しみになりました。

取材中に驚いたことは、多くの人が入れ替わり立ち代わり志野さんの元を訪れることです。様子を見に来る人、工具などを貸してくれる人、アドバイスをくれる人など。
この集落に移住して間もないのに、地元の人たちと打ち解け、しかも会話は福井弁。すっかり集落の人になっていました。志野さんが人と接する上で大切にしていることは「嘘をつかないこと」「元気よく挨拶をすること」「人に興味を持つこと」。志野さんから人間力も学んだ1年でした。

塩づくり、養鶏、米づくり、製塩所でのイベントなど2020年に志野さんはいろいろなことをスタートさせました。バイタリティとアイデア、そしてスピード感にあふれ、人とのつながりを大切にする志野さんの力で過疎高齢化が進む地域が賑わい始めています。甘味と深い味わいの志野さんの塩「百笑の塩」のファンも増えました。
景色、自然、人、塩。福井の魅力をたくさん感じて頂けたら幸いです。

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