#226 僕の先生、絶対怒らない ~これが未来の学習塾~ 

2020年8月1日(土)(テレビ朝日 放送) 山形放送制作 協力/文部科学省 総務省 中小機構 JAグループ

何かをつぶやきながら、家の中をぐるぐる歩き回り、ホワイトボードに文字を書き込む。
発想しているのだという。と思ったら、山の上でバイオリンを弾いてしまう。この若者、実は学習塾の先生。大垣敬寛さん(29)。東京大学文学部卒業後、自然豊かな地を求め、知り合いの先輩がいる山形県南陽市に移住した。

この学習塾、いわゆる進学するための塾ではない。覗いてみると、プログラミングをしてロボットを動かしたり、VRを使いゲームをしたり、遊びの感覚にも見える…。具体的な授業のテーマはというと「ギャンブル統計」に「YouTuberになろう!」。子どもたちにギャンブル!? いったいどんなことを教えているのか?大垣さんが最も大事にしていることは“おもしろさとワクワク感”だ。学んでいるのは小学生から高校生まで12人。みんな積極的に手を挙げて発言し、授業が賑やかに進む。

大垣さんは塾を立ち上げる前、南陽市の地域おこし協力隊で3年間活動。そのときこう感じたという。「自ら発想し、街づくりを行えるような人材が必要だ!」それには、子どものうちから創造力を身に付ける教育が必要なのではないか。そんな結論に至った。学習塾を立ち上げるきっかけだ。大垣先生っていったいどんな先生?子どもたちからの返答は「子どもみたいな先生」「趣味を極めるとこうなるのかな…と思う」「優しい、怒ったところ見たことない」。子どもの目線に降りて指導する先生像がくっきりと浮かぶ。ちょっと変わった学習塾、大垣先生と子どもたちを追った。

編集後記

ディレクター:荒木重弥(山形放送)

今回、テーマが学習塾で撮影時期が新型コロナウイルス感染拡大期と重なったため、大垣さんと子どもたちのからみが果たして撮影できるのか、気が気ではありませんでした。YouTubeにアップするなどしたオンライン授業は行っていましたが、このままオンラインだったら番組が成立するのか…。しかし、何とか対面授業が再開。メインシーンは実質1か月の撮影となりました。

見ると「ギャンブル統計」や「YouTuberになろう!」聞いただけで興味がわく授業がいったいどんなふうに進んでいくかがやはり見どころの一つです。ギャンブルでは、お金ではなくチップを実際にかけて子どもと大垣さんがゲームをしながら学んでいきます。それでも真の狙いは、確率や統計的な考え方をしっかりと学ぶこと。だましだまされのような危機を回避できることを興味深く知ってもらうのです。「大人を超えろ」というキャッチフレーズがこの塾にありますが、大人が失敗するようなことを、子どものうちから学んでいくのです。

ここで学ぶ中学3年生の石垣雄伍くん、自宅に取材にいったとき、塾に行ってから変化したことを本音で語ってくれました。「勉強を効率的にできるようになった。生活が充実するようになった」と。子どもたちの大垣さんの評価がとてもおもしろいです。ある子は「趣味を極めるとこうなるんだな」と。勉強が大好きな大垣さんのことを揶揄しているようで笑えます。ほかにも「子どもみたいな先生」「怒ったところみたことない」とか。大垣さんと子どもたちの距離がほんとに短いんだなって感じます。

大垣さんは私から見るとても個性的です。大学の時から借りる部屋の壁一面をホワイトボードにして、家の中を歩きながら発想したり、朝必ずめい想したり。さらに落ち込んだりすると山にのぼってヴァイオリンを弾いたりと。いったい何を考えて弾いてるのかと尋ねると「自然の中に溶け込みたい…」そして最後には「溶けていく感じになる」弱点は「人と接するのは得意ではない」そうですが、子どもたちと楽しそうに接している姿からはとてもそんなふうには見えません。大垣さんのそんな不思議な魅力にも注目してほしいと思います。

子どもたちがどう変化していくのか、もう少し長いスパンで描いてみるとさらにおもしろくなるのではと感じています。

番組情報

学習塾「ESTEM(エステム」
【住所】山形県米沢市金池2-1-11
【電話】0238-33-9610 (大垣 敬寛)

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