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今、新潟で注目を集めている美術館「まちごと美術館ことこと(cotocoto)」。“美術館”といっても、建物はどこにもありません。その名の通り、街をまるごと美術館ととらえて様々な場所にアートを展示する面白い取り組みなのです。魅力あふれるアートを制作するのは、障がいのある作家たち。驚くほど緻密な作品や、大胆なタッチの作品、はたまた思わずクスっと笑ってしまう作品等々…個性豊かなアートの数々が、新潟の街を彩っています。
新潟市の清掃会社が運営するこの「まちごと美術館」は、アートを企業などに有料レンタルすることで障がいのある人に収入を生み出しています。2016年のスタートから利用者が年々増え、今では170を越える企業にアートが飾られています。
全国でも類を見ないこの取り組みに奔走するのは、アートディレクターの高橋亜紀さん(45)。企業への配達、作品の管理、作家を訪ね新作を発掘…それらをほとんど一人で行うパワフルウーマンです。「苦労もたくさんあるけど、新作に出会うとなぜか疲れがとれる。この魅力を伝えるのが仕事!」と笑顔で語ります。レンタルという仕組みを生み出した代表の肥田野正明さん(51)は、アートにとどまらないさらなる障がい者の活躍の場を模索し続けています。
アーティストのみなさんは、まちごと美術館に参加することで様々な変化が生まれています。小田潤さん(35)は、稼いだお金でお気に入りのジュースを買うことが楽しみ。最年少作家の大森真奈さん(18)には、家族で作品を見に行くという楽しみができました。また、人気作家のしゅんすけさん(30)は、人生に大きな変化が起こったといいます。
街にたくさんの奇跡を起こしつづける「まちごと美術館ことこと」。その魅力を伝えます。
編集後記
ディレクター:内藤 亜沙美(新潟放送)
「障がいのある人と接する機会もないし、どう接してよいかわからない。」多くの人がそうだと思います。私もその一人でした。この企画を立てたときも、果たしてアーティストの取材はさせてもらえるのだろうか?コミュニケーションはとれるのだろうか?自分の中で不安がありました。
「まちごと美術館」は、「アート」を介してそのような心の距離を縮める役割を果たしています。私自身いざ番組の取材を始めてみると、作品の個性や作家自身の人柄にどんどん魅了され、もっと深く知りたい、関わりたいと思うようになっていきました。この番組を通して、多くの人が抱いている「障がい者」「健常者」という心の壁を、少しでも壊す役割が果たせたらと思っています。
番組に登場するある作家のお母さんが、まちごと美術館について語ったことが印象に残っています。「障がい者の親、もしくは福祉の世界以外の人で、ここまで興味を持って活動してくれるのがとても珍しい。」そこまで社会は分断しているのかと、はっとさせられる言葉でした。番組のサブタイトルにある「共生社会」という言葉がなくなるくらい、障がいのある人が当たり前に社会に溶け込む世の中を願い、これからも取材を進めていきたいと思っています。
番組情報
まちごと美術館ことこと https://cotocoto-museum.com/