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東日本大震災の津波により押し流された家屋。家族の思い出が刻まれた柱などは一瞬にして”流木””瓦礫”と呼ばれるものになりました。そんな木材を材料にバイオリン製作を始めたのが、バイオリンの修理や調整を行うリペア師・中澤宗幸さん78歳です。
「あれは瓦礫じゃない。思い出と歴史の山じゃないの?」奥様の一言がキッカケで生まれた「TSUNAMI VIOLIN」の裏側には油絵で描かれた「奇跡の一本松」が…
中澤さんは、バイオリンの音色で被災者を癒したい…そして、震災の悲しみを風化させたくないとバイオリン製作の傍ら全国で演奏会を開催。1000人のバイオリニストによって「TSUNAMI VIOLIN」をリレー演奏するという取り組みを行っています。
小学生でも…世界的バイオリニストでも…思いがあればプロアマ問わず演奏することが、出来る「TSUNAMI VIOLIN」。 今回は、中澤さんの新たなバイオリン作りや演奏会の様子、そして、バイオリンが弾き継がれていく先にある願いを取材しました。
編集後記
ディレクター:関 駿(テレビ朝日映像)
「音楽で想いを伝える」
幼い頃から大切にしてきた私の音楽体験。その大切さと想いをいつかテレビで伝えたい…そんな願いが今回の番組で実現することが出来ました。
震災を風化させない為に「TSUNAMI VIOLIN」製作を始めた中澤さん。そんな中澤さんのプロアマ問わず1000人のバイオリニストに弾き継いでもらうという取り組みは、まさに私と同じ「音楽で想いを伝える」というものでした。普段はとても温厚な方ですが、バイオリンへの情熱は誰よりも強く熱く、圧倒されます。
東京から岩手県の大槌町まで片道6時間。道中、中澤さんはエスカレーターでなく敢えて階段を利用されていました。「毎日鍛えないとすぐ衰えるからね」と。この徹底した自己管理と継続力が「TSUNAMI VIOLIN」活動を続けられるのだと納得しました。
今回、番組では二人のバイオリニストが中澤さんの活動に賛同し演奏してくれました。一人はバイオリン歴4年という被災地の小学生、もう一人は世界的バイオリニスト古澤巌さんです。プロ、アマ、年齢に関係なく気持ちがこもった演奏はまっすぐ心に響きます。テレビ画面から、この二人の素晴らしい音楽と感動が必ず伝わると願っています。
「音楽はチカラ」これは取材中に中澤さんが何度かおっしゃっていた言葉です。「人間は忘れやすいですから、一人でも多くの人に、ゆっくりと伝えていかなければならない。バイオリンは人間を超えて200年300年と生きていくものだから、バイオリンを通して日本にはこんなことがあったんだと伝えていけたら…。」
中澤さんの取り組みはまだ道半ばだといいます。その願いがたくさんの方に届くように、私も願っています。
番組情報
◆Classic for Japan (TSUNAMI VIOLIN PROJECT)
【HP】https://classic-for-japan.or.jp/tsunami_violin/concept.php