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山形県の中央・月山(がっさん)の山懐、鶴岡市田麦俣に住む渋谷真子(まこ)さん(28)。2年前まではイケイケギャルで、奥山で猟をするマタギで、かやぶき職人(見習い)でした。そして今は、チャンネル登録者数が6万8千人(2020.6.3現在)を超える人気の車いすYouTuberです。
2018年7月、真子さんはかやぶき屋根の補修作業中に誤って3メートル下に転落。脊髄損傷の大けがを負い、下半身麻痺になりました。脊髄損傷は今の医学では治すことはできません。「これから私の生活はどうなってしまうんだろう」。病床でインターネットを使って調べても、ほとんど情報がありませんでした。そこで真子さんは、「同じ脊髄損傷の人たちの参考になれれば」と、受傷してわずか1年後、YouTubeで自分の車いす生活の配信を始めたのです。
真子さんの動画は「私が抱える排泄障害」、「下半身麻痺女子の性事情」、「移乗方法完全解説」、「車いす女子のホテル事情」、「海外まで1人で行ってみた」などがテーマ。障がい者の性事情や、尿意や便意を感じられない排泄障害など、デリケートな悩みも包み隠さずさらけ出しています。これまであまり語られることがなかったためか、これらの動画は反響を呼び、わずか半年でチャンネル登録者数は5万人を超えました。現在の総視聴回数は1400万回に上ります。
海外旅行やドライブ、パラスポーツ体験など、障がいを負ってもアクティブに活動を続ける真子さん。いつも笑顔を絶やさず、底抜けに明るく前向きでいられるのは一体、なぜなのでしょうか?それにはある思いがありました。
「“障がい者”という枠組を壊したい」。
新たな夢に向かって歩み始めた真子さんの輝きを見つめます
編集後記
ディレクター:伊藤和幸(東北映音)
主人公の車いすYouTuber渋谷真子さん(28)には、“ギャップ”がたくさんあり、まず心惹かれました。
雰囲気が都会的なのに、住んでいるところは山形県でも有名な“一流の田舎”。ギャル(名前も“渋谷”)でパリピなのに、狩猟免許を持ち、奥深い山で猟をする元マタギ。YouTubeでは明るく元気なのに、ブログでは重く苦しい心の奥底を吐露。
取材ではいつも底抜けに明るい真子さんは2年前、転落事故で脊髄を損傷し、下半身麻痺になりました。「落ち込むことはないんですか?」と、何度聞いても、「みんなに聞かれるんですが、言われるほど落ち込みませんでした!例えるなら、大好きな歌手のコンサートチケットにはずれたくらいかなあ」とあっけらかん。事故直後の姿を「記念に」と、スマホで自撮りするほど冷静です。
NPO法人「日本せきずい基金」(東京)によると、日本では毎年、脊髄を損傷する人が約5千人いるとされます。事故のショックで、しばらく引きこもってしまう人がほとんどで、社会復帰するまでは早くて3年はかかるそうです。中には、何十年も引きこもる人も。しかし、真子さんは事故から半年でブログ、1年でYouTubeを始め、瞬く間に人気YouTuberの仲間入りを果たしました。この神がかり的パワーの源は、恐らくクマ肉を食べていることかも!?まさに「現代のもののけ姫」と言えます。
新型コロナウィルスの影響で、車いすで初参加する予定だった地元の「鶴岡天神祭」や、パネリストを務める予定だった外務省主催の「国際女性会議WAW!」も中止に。一人で飛行機や電車に乗り出掛ける様子も取材する予定でした。
高校の同級生が「真子が向かっている最終地点はどこなの?」と質問。その時、本人は言葉を濁していましたが、取材の最終日、カメラの前で、はにかみながらもその目指す高みを話してくれました。YouTuberに留まらない、真子さんの夢とは!?ご注目ください。
番組情報
渋谷真子さんのYouTube「現代のもののけ姫Maco」