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福島県の中央に位置し、南には猪苗代湖、東西北の三方を山々に囲まれる自然あふれる町・猪苗代。そんな自然あふれる環境の中、一家総出で田植えを行なっているのが土屋一家。その中で誰よりも活発に動くのが土屋家の長男・土屋勇輝さん(31)。元々は家業を継ぐことは考えておらず、東京の大学へ進学。就職を決めていました。しかし、2011年3月 東日本大震災が発生。勇輝さんも故郷の被害に心を痛めました。「故郷のために何かしたい」と居てもたっても居られず、故郷に戻ることを決めました。
勇輝さんを待ち受けていたのは厳しい環境でした。知識のない農作業。福島に向けられる風評被害。父親からは「何も知らないお前に何ができる?」と相手にもされませんでした。
実家の農業を手伝いつつ、ボランティア活動。勇輝さんは手探りながら、「故郷のためにできること」を探します。そんな中で出会ったのは、「会津伝統野菜」です。種の保存が必要となる在来種で、現在生産量が減少している会津伝統野菜。しかし、「種から育てることができる」ことが震災を経験した農家としてできることだと考え、栽培を始めます。地域の食を守るものとして、そして命をつなぐ大切さを「会津伝統野菜」を通じて伝えていきます。
さらに農業と同時に行なっていたボランティア活動でも大切なものと出会います。ボランティアのイベントで出会った、東京出身の妻・美香さん(37)。二人は「自然の魅力を人に伝えたい」という共通の思いを持ち、 “農業を中心に自然と人とがつながる場所づくりを行う”「のうのば」を立ち上げます。農家だから伝えられる自然の良さ。そして「生きる力」。そこには失ってはいけない残すべきものがあると勇輝さんは語ります。
「故郷のために何かしたい」。悩みながらも一歩一歩進んでいく若い世代の姿を追います。
編集後記
ディレクター:佐藤 真也(福島テレビ)
Uターンしてきての苦悩を聞きたいと思い、「何か困っていることありませんか?」と聞くと、「特にないですね。あるとすればやりたいことがありすぎて時間がないこと」と、即答。撮影を予定していたイベントが台風の影響で中止になってしまった時も、取材ができず落ち込むだけの私とは違い、「防災ついて考えるイベントをやろう」と次のこと考えていました。実は勇輝さんと同い年の私。取材していると「本当に同じ歳なのか?」と自分の小ささを感じてしまいました。しかし同時に「自分もやってやる!」と活力も湧いてきます。
「自分にしかできないことがやりたい」。そういう熱い思いを持っている人は非常に多いと思います。しかし、年を重ねる毎に「自分には特別なことはできない」と思い、その熱い思いに蓋をしてしまいます。しかし、勇輝さんは違います。「自分で無理なことは周りの力を借りてやればいい」。とにかく活動的です。これからの時代を担っていく20代から30代。活動的な勇輝さんを見てパワーをもらってほしいと思います。