熊本市の老舗婦人服店の4代目・山田敏夫（3３）さんが2012年に立ち上げたファクトリーブランド専門通販サイト「Factelier（ファクトリエ）」。東京・銀座にショールームを構え、急成長を続ける注目ブランドです。
1990年に約50％だった国内のアパレル製品の国産比率は、3％台まで落ち込んでいます。「このままでは世界に誇る日本の縫製技術が途絶えてしまう」（山田談）こんな危機感からファクトリエは生まれました。流通をシンプルにしてネット販売に特化。日本の縫製工場が独自開発した”Made in JAPAN”の商品のみを、消費者に直接販売します。
ファクトリエで展開する工場は、世界の有名ブランドの下請け（または同等の技術を持つ）工場です。山田さんは、日本各地の縫製工場を訪ね歩き、工場のオリジナル商品開発を打診し、「Factelier×（工場名）」として展開します。縫製の細部にまでこだわった日本製。価格は、品質に対してリーズナブル。これが目の肥えた消費者の心をつかみました。
徐々に商品を増やし続けるファクトリエは、大手婦人服メーカーの下請けを行う熊本県内の縫製工場と、スカートの商品開発を行いました。番組では、スカートの商品開発の舞台裏に密着し、”Made in JAPAN”を掲げ、世界ブランドを目指す若き経営者の奮闘を描きます。
編集後記
ディレクター：薛 力夫（熊本放送）
番組の主人公・山田さんが、ブランド「ファクトリエ」を立ち上げたのが2012年。2012年から現在までのことは、番組では詳しく紹介しませんでしたが、アパートの一室でファクトリエは産声をあげました。そして、山田さんは、夜行バスで現地に赴き、電話帳で縫製工場の電話番号を探して、ほぼ飛び込みの状態で縫製工場を訪ねていました。いきなり縫製工場にやってきて、ブランドを作りませんか？と切り出す山田さん。縫製工場のスタッフからは、怪しい人物と思われ、ほとんど相手にされなかったそうです。また、商品を販売する面でも、最初からネット（通販サイト）で順調に売れたわけではなく、多くの在庫を抱えて、行商のような販売経験を重ね、実際にお客さんに商品（衣類）を着用してもらうことで少しずつ信頼を得て、業界の風雲児と呼ばれるまでになりました。
番組では、ファクトリエ山田さんの取り組みを、下請け工場のスカート開発を縦軸にして紹介しています。そして、下請け工場の取材に力点を置きました。山田さんの活動ばかりをカメラで追いかけるのではなく、下請け工場の苦悩を取材しなければ、山田さんの取り組みの意義が伝わりにくいと思ったからです。
今回の取材で、リアルに知りました。縫製の下請け工場は、生き残るために必死です。縫製の下請け工場は、多くの場合、地方の小さな町にあります。海外との価格競争にさらされ、都市部では想像できないような賃金の実態があります。そして、地域の雇用の問題も伴います。小さな町は縫製工場がなくなれば、代わりの職場もありません。働く場所がなくなれば、地域の人々にとって死活問題です。それでも、海外との競争は、待ったなしで襲いかかってきます。そんな中で、下請けの縫製工場は、独自の商品開発の道を山田さんと歩むのです。
今回、番組に登場していませんが、ファクトリエでシャツを展開する縫製工場があります。元々はアパレルメーカーの生産子会社だった縫製工場ですが、親会社の経営破綻で工場閉鎖の危機に追い込まれ、独立に踏み切った縫製工場です。
仕事の見通しも立たない中での独立は、一か八かの賭けでした。「親会社が倒産しても、縫製工場で働く人たちを巻き添えにはできない」という必死の思いだったそうです。山田さんは、この工場を訪ね、一緒にブランドを育てましょうと語りました。そして、縫製工場は「最高のシャツを作る」という思いでファクトリエに未来を託しました。いま、この縫製工場の商品は、ファクトリエの主力商品のひとつになっています。
ファクトリエで展開する縫製工場の数は、現在30を越えています。それぞれの縫製工場に、それぞれのドラマがあります。そのドラマが幾重にもなって、ファクトリエの商品群が展開されています。そのことに思いを馳せると、山田さんの取り組みは、とても価値があることに思えてきます。
番組情報
◆ファクトリエ（会社名：ライフスタイルアクセント株式会社）
熊本本社
【住 所】熊本県熊本市中央区手取本町4-7
【電 話】096-352-0425（マルタ號)
※商品に関するお問い合わせは、東京オフィスにお願いします。
東京オフィス
【住 所】東京都中央区銀座8-12-11第二サンビル3F
【電 話】03-5843-8786
【Ｈ Ｐ】http://factelier.com
