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徳島県神山町は、山合いにある過疎と高齢化に悩む町だ。そんな田舎の町に近年、移住者が増え続けている。その数は、7年間で138人(※移住支援センター経由)。
人が増えると店も増え、オシャレなレストランや最先端技術を持つIT企業などが商店街にでき、町に賑わいが戻りつつある。移住者が増える理由の1つが「神山塾」と呼ばれる職業体験の学校だ。県外から参加した卒業生の多くが町に残り働いている。
卒業生の一人、吉沢公輔さんは神奈川出身の39歳。町の美しい自然に心動かされ移住を決めた。吉沢さんは、杉の間伐材で食器を作り、荒れている人工林の問題や衰退する町の林業に希望の光を差し込む。しかし会社員時代と比べると収入は、3分の1に減り、アルバイトで生計を立てるなど生活は楽ではない。そんな吉沢さんを支えるのは、県外から移住した仲間の存在だった。
鈴木麻里子さんは、千葉出身の29歳。神山塾を卒業後、町に残って就職した。夏にオープンする宿で働く鈴木さんは、宿のメニューを試作したり準備に大忙しだ。鈴木さんが頼りにするのが、地元で移住者を支援している岩丸潔さん。岩丸さんは、衣料品店を営みながら、移住者の相談にのったり空き家を探したり、若者の移住を手助けする。慣れない田舎暮らしの若者を温かく見守る岩丸さん、実は病気で亡くした妻も奈良からの移住者だった。岩丸さんは、若者たちの境遇と亡き妻の姿を重ね合わせ、家にやってくる若者の話に静かにうなずくのだった。
自然豊かな場所に憧れて家族で移住したのは、塩田さん一家。去年、オーガニック食材にこだわったピザ店を開き、慣れない店の準備と3人の子どもの世話で大忙しだ。憧れの田舎暮らしを楽しむ余裕はまだないが、会社員時代と比べると家族で一緒に過ごす時間が増えた。近所の人が野菜を持って来てくれたり、すっかり地域にも溶け込んだ。夢は神山産の食材でピザを作り、ふるまうことだ。
3組の移住者の暮らしから見える、人と人とのつながりや町を彩る美しい自然など町の魅力を知るとともに、神山の街づくりについて考える。
編集後記
ディレクター:仲宗根 義典(四国放送)
県外からやってくる移住者に思うこと、それは「どうして、わざわざ徳島の神山に?」と
いう素朴な疑問でした。山に囲まれた田舎なんて、日本中どこでもあるはずなのにナゼ?
そこで、東京から来た移住希望の男性に同じ質問をしてみると「神山はブランドみたいな
もの」と答えがかえってきました。田舎暮らしを望む人たちの間では、神山町に行くことは
「流行」や「オシャレ」にも似た感覚があるらしいのです。(もちろん、移住者全員では
ありませが)
田舎の人が都会に行くことをカッコいいと思うように、都会の人にとっては田舎に行く
ことがカッコいい。さらに、神山は田舎の中でも、特別なイメージを持たれているようです。
神山町は魅力ある町づくりを目指して20年以上活動しています。道路や公園を
民間企業がボランティアで清掃する活動を全国で初めて行ったり、海外のアーティストを
呼び、町で創作活動をしてもらう「アーティスト・イン・レジデンス」など先進的な
取り組みを積み重ねた結果、「神山町は他の田舎とは何か違う」と思われているようです。
つまりは、イメージ戦略の勝利ではないでしょうか。
現在、神山にはクリエイティブな発想を持った、若い移住者がたくさんいます。
彼らの存在は、町で何かを起こしてくれそうな期待感を持たせてくれます。そうした
「いいイメージ」が広がっていけば、日本社会も明るくなりそうです。
番組情報
◆神山への移住に関する問い合わせ
NPO法人グリーンバレー
【電話】088-676-1177