2012年11月25日(日)(テレビ朝日 放送) 南日本放送制作 協力 文部科学省
まるで薔薇のように盛りつけられた黒豚、それを金色に輝く秘伝のスープに潜らせ、すき焼きのように卵につけて食べる。今や全国に知れ渡る鹿児島名物「黒豚のしゃぶしゃぶ」です。琉球や奄美で飼われていた島豚がルーツのかごしま黒豚は、およそ450年の歴史を誇ります。ところが、この料理が誕生したのは僅か34年前。その背景にはかごしま黒豚が辿った苦難の歴史がありました。高度成長期、大量生産の波が押し寄せ、生産効率の悪かった黒豚は白豚にとって変わり絶滅の危機に瀕したのです。
「まだ黒豚を育てる馬鹿どもがいる」そう言われながらも量より質にこだわり続けた生産者の沖田速男さん(80)。当時「大きな声で黒豚のしゃぶしゃぶと言えなかった」と話すのは黒豚しゃぶしゃぶ発祥と言われる黒豚料理専門店「あぢもり」の社長、佐藤光也さん(66)。薩摩の至宝を信じて守り抜いた人々の情熱と、かごしま黒豚の美味しさの秘密に迫ります。
◇ディレクター:武藤 久(南日本放送)◇
昨年、博多駅から鹿児島中央駅を結ぶ九州新幹線が全線開通しました。全国からやってくる観光客のお目当てはやはり「黒豚のしゃぶしゃぶ」です。私自身、鹿児島に暮らして4年。県外の人間からすると鹿児島名物といえば黒豚と、あまりに当たり前すぎて何の疑いも持ちませんでした。番組のリサーチで黒豚しゃぶしゃぶ発祥の店「あぢもり」を訪れた時、社長の佐藤さんは「食べてからしか話はしない」と一喝。かごしま黒豚は他とは一味も二味も違うという自信と誇りに満ち溢れていました。そして何故、黒豚のしゃぶしゃぶを始めたのか。その背景を知ればしるほど、あの時の一言には黒豚が辿った苦難の歴史と厳しい時代を耐え抜いた生産農家への想いが込められていたことに気が付きました。
今とは違い当時の豚は、硬い、脂っこい、豚臭がするなど高級ブランド品とは程遠い存在。「あぢもり」が黒豚のしゃぶしゃぶをはじめた当初は、お客さんが遠のき従業員は全員店を辞め、10年間自分の給料は出なかったと言います。それが鹿児島を象徴する名物になると誰が予想したでしょうか。「ヒット商品を生み出すにはタブーに挑まなければならない」という料理人の言葉と、見向きもされなかった黒豚を信じて守った生産者の情熱に、地方で生き抜く大切な精神を学びました。
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