＃２０ 別府温泉に学ぶ　地獄のハッピーレシピ

大分県別府市は全国屈指の”温泉”観光都市で湧出量、源泉数は”日本一”。年間１０００万人の観光客が訪れます。別府は８つの地域で、それぞれ特徴のある温泉が湧き出ており「別府八湯」と呼ばれています。そのひとつ「鉄輪（かんなわ）温泉」は大小２００の旅館、宿が連ね、長く逗留する湯治客が多いのが特長です。湯治客は温泉の噴気を利用した”地獄蒸し”で自分達の食事を作ります。

幼少時代を別府で過ごし、身近に”地獄蒸し”を経験した平山一政さん（７４）は蒸し料理研究の第一人者。平山さんが提唱する４０℃～９０℃で蒸す調理法「低温スチーミング」は、素材がシャキシャキで、うまみ・栄養素はそのままというなんとも”ミラクル”な調理法です。今、全国的に注目を集めています。
先日、別府・鉄輪温泉で平山先生の講演会が開かれました。それを聞きつけて参加したのは、１３年連続・品質日本一を誇るしいたけの産地・豊後大野市からやってきた”全国キノコ料理チャンピオン”。絶品大分産しいたけが、いつも以上の香りとあわびのような食感と歯ごたえの料理に大変身！

心も体を癒される目からウロコの「蒸し調理テクニック」をご紹介します。

◇ディレクター：北里　邦寿（大分放送）◇
別府の湯治文化と切り離すことができない”地獄蒸し”は、質素でもおいしく食べたいという気持ちが強い湯治客の”目”と”舌”を楽しませるなんともヘルシーな調理法です。
別府・鉄輪（かんなわ）温泉をベースにリサーチする際にある方が、「鉄輪は暮らすように旅をするところ。」と教えてくれました。そして 鉄輪の湯治を、歴史は古いが最先端をいく”コンドミニアム”と称します。番組に登場した陽光荘のような貸し間は、短中期間で手軽に宿泊（生活）でき、温泉と地獄蒸しという非日常の中にあります。調理場をのぞいてみると宿泊客同士のコミュニティがあるので、一人旅でもひとりぼっちの気がしません。近所とのコミュニケーションが希薄になっている現代では、鉄輪のまち全体が顔なじみ、知り合いのような「ホーム」であるという様は、取材を進める中で納得の行くものとなりました。
今回、番組を制作するにあたり、「湯治の街は、夏暇なんで！（大分弁）」と女将さんたちからお言葉をいただきながらも、取材期間中に、「低温スチーミング」の平山一政さん、日本一のしいたけ所・豊後大野市の「全国きのこ料理チャンピオン」工藤さんとお会いすることができたのは本当に幸いでした。
別府の人を癒す”温泉力”をあらためて痛感しつつも”蒸す”という何気ない調理法が、今まで以上に魅力的に再認識できた取材となりました。

◆地獄蒸しは健康を気づかう湯治客にとって
理にかなった調理法である◆

◆”旅人をねんごろにせよ（もてなしなさい）”は
今でも別府観光の心得として根づいている◆

◆”蒸し料理”には　素材を活かす体にやさしい”技”がある◆

■家庭でできる　低温スチーミング■
【準備するもの】
「フタ」として使う「ガラスボウル」、素材を乗せる「アミ」
適温を知るために「キッチン温度計」、湯をわかす「鍋」

【低音スチーミングの手順】
①鍋に湯をわかして沸騰させ、いったん火を止めます
②鍋に網をのせます
③鍋とアミの間にキッチン温度計をはさみます
④素材をザルに入れて、アミの上にのせます
⑤フタをかぶせます
⑥蒸します

【温度と時間のガイド】
じゃがいも　くし切り　　９０℃　　２０分
にんじん　　細切り　　　８０℃　　２０分
キャベツ　　　　　　　　　７０℃　　３０分
鶏もも肉　　　　　　　　　７０℃　　３０分
サバ　　　　切り身　　　７０℃　　３０分
しいたけ　　　　　　　　　７０℃　　３０分
ホウレン草　　　　　　　７０℃　　１５分
もやし　　　　　　　　　　６５℃　　１５分

※温度と時間は多少違ってきますスチーミング中、１０度程度の温度変化は心配いりません。
※上記、表はあくまで目安ですのでいろいろ試してみましょう。

■しいたけのソテー■
【作り方】
①しいたけを70℃で30分間低温スチーミングする
②しいたけをフライパンにうつし、焼き色をつける
③食べやすい大きさに切る
④バジルソースをかける

しいたけを低温スチーミングすると、おどろくほど濃厚なうまみが出ます。
是非お試し下さい！

◆番組でご紹介した情報◆

■陽光荘
【住所】別府市鉄輪井田３組
【電話】０９７７-６６-０４４０

■ここちカフェ　むすびの　　日替わりランチ　８００円
【住所】別府市鉄輪上１組
【電話】０９７７-６６-０１５６

■里の駅　やすらぎ交差点　　原木どんこ寿司（1パック・６００円）
【住所】豊後大野市朝地町梨小1141-1
【電話】0974-74-2020

■地獄蒸し工房　鉄輪
【住所】別府市風呂本5組
【電話】0977-66-3775