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2011年2月19日(土)(テレビ朝日OA)静岡放送制作
山懐に抱かれた小さな町で屈指の茶の産地の静岡県島田市川根町。この町に抜里(ぬくり)駅という小さな無人駅があります。駅舎の窓からは賑やかに惣菜を作る主婦たちの姿がありました。中心となっている諸田サヨさん(73歳)は、村の女性達に声をかけ、この活動を始めました。この村は高齢化が進み、およそ一割の世帯がお年寄りの一人暮らしです。
「惣菜はきっかけ」と話すサヨさんは、村のお年寄り達を心配して、おしゃべりがてら出張販売にも出向きます。
村の人たちもまた、サヨさんの訪問を心待ちにしています。
しかし、明るく振舞うサヨさんは、ご主人を病で亡くし、同じ孤独な老人でした。
さらには、幼少期、開拓団として満州国に渡り、人の死を目の当たりにしてきました。
その経験が、サヨさんに人生を見つめ直す機会を与えました。
駅で真心込めた惣菜を作り、村のお年寄りに手渡しながら、悩みを分かち合い、励ましあい、ふれあいを楽しむ。そんなサヨさんのいる無人駅は、温かさに包まれています。
◆老いに負けるな
◆幸せは共有するもの
◆過去を糧に『今を生きる』
◆自分の力で生き抜き みんなが幸せになること
◇ディレクター:阿部朋也◇
そもそも私はサヨさんを取材しようとしていたわけではなく、いつ取り壊されるかわからない昭和の始めに建てられた無人駅をカメラに収めようとしていました。
しかし、全く違う被写体を追っていくことになるのです。
無人駅では地元の主婦たちが集まり、惣菜作りをしていました。近くの温泉施設などに売り、年一回旅行に行くのが楽しみと、リーダーのサヨさんは、話してくれました。
その後偶然、茶畑の間を歩くサヨさんを見つけました。一人暮らしの老人を訪ね、原価であの惣菜を売り歩いていたのです。「この年になってお金より他人の笑顔が元気の源です。」と重いタッパーを持ちながらサヨさんは話してくれました。この時から私は小さなカメラ一台を持ってサヨさんに会うために無人駅のある村に通い詰めることになりました。
忘れられないのはあるお年よりが笑った瞬間です。山本茂さんは、サヨさんが訪問しても無愛想でした。山本さんは頼りきりだった奥さんを突然亡くし、気難しくなっていたのです。サヨさんは口を開こうとしない山本さんを何回も訪ねました。そしてある日、山本さんは突然亡くなった奥さんのことを話し始め、サヨさんに笑顔を見せたのです。
取材を通して、人のいない駅を訪ねたことをきっかけに、人間同士が心を通わせる瞬間に居合わせることができました。大切な話は決して大きな町だけで繰り広げられる訳ではないと感じました。
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