其の70  能登のわらしべ長者~竹からカブトムシ!アワビ?~

2009年11月7日(土)(テレビ朝日OA) 北陸放送制作

石川県輪島市で農業を営む合間修一(ごうましゅういち)さん64才は、竹藪の浸食によって荒れた里山を何とかしたいと、竹の有機肥料化に取り組みます。竹をチップ状にして発酵させると、その過程でカブトムシが産卵場所として集まり、幼虫が育ちました。話を聞きつけた人達が「カブトムシの里」を作ろうと動き出し、竹チップの山は思わぬ宝の山と変わりました。また、竹チップが発酵する時の熱を利用して「アワビの養殖」にも取り組み始めています。竹の有機肥料化を普及させたいと奥能登を一人走り回る合間さんの情熱、その原動力は「これ以上、人が減っていく町や村を見たくない。」との強い思いです。合間さんの活動に導かれるように次第に人が集まり、竹を有効利用したいとの小さな思いが、地域全体の明日をも左右する新たな産業誕生へと変わっていきます。過疎化と高齢化で、地域の存続に危機感を抱く人達にとって、「カブトムシの里」は観光客を集める地域興しの起爆剤として、まさに宝の山となるのでしょうか。そんな合間さんの人間力に迫ります。



◇ディレクター:東海瑞穂◇
過疎化と高齢化が進む奥能登で、放置竹林を整備しながら、働く場所を確保し、持続的に自然と共生できる仕組みを作ろうと、合間さんは自らのアイデアをどんどん実行に移していきます。そのエネルギーの高さ、行動力、着眼点、発想の豊かさ、人脈の広さに感心しました。その姿から、人間に与えられた使命というものを感じました。
美しい田園風景、里山の豊かな緑は、長い歴史の間、多くの先人の知恵と努力、その積み重ねによって築き上げられた日本の原風景です。それらがまもなく失われる運命にある、その危機を痛感した取材でした。過疎地に生きる人々の悲しさ寂しさに触れ、それが能登だけではなく全国的な問題だと気づき、改めて、地域で生きる糧を作ろうとする合間の思い、その取り組みの大事さを感じました。
合間さんは、終戦間近の農家に生まれ、父を早くに亡くし、若い時から家族を支えて働きました。早くから実社会でもまれ、生きていくすべを学んだのだと感じました。自分の力で家族を支えて生きていかねばならない責任感は、何より合間さんを動かしていたのだと思います。誰かのために、何かのためにという奉仕の精神は、地域社会の中で様々な人と出会い、支え合って生きてきたからこそ、育まれたものかもしれません。
また、65歳の今も若者以上に精力的に活動する合間さんの精神力は、農業で培われたと感じました。農業は、厳しい自然と向き合う忍耐力を育みます。機械化されたとはいえ、たとえば30キロ以上もある米袋をいくつも運ぶなど、体力がいります。可能性を信じて努力を続けられるのも、忍耐力があってこそです。合間さんの少年時代の話を聞きながら、厳しく辛く堪え忍ぶ時間こそ、人を育てるのだと思いました。
合間さんを突き動かすのは、美しい日本の里山、大地、それらを次の世代に残さなければならないという責任感。地域に良い資源がありながら、それを利用しなくて、よそから買ったものばかりを使ってることに疑問があったと合間さん。「みんなで知恵を働かせれば、すぐそばにあるものを使う方法がたくさんある。余所から買わずに地元にあるものを使えば、十分に地元で仕事の量がある。地域にある資源を活用して、ふるさと能登から全国へ発信できるようなものを作らなければ、いつまでたっても過疎化は、解決できない。」
合間さんのアイデアは、竹肥料、そして、カブトムシの飼育や海産物、淡水魚の養殖までにつながっていきます。農林漁業、そして建設業、様々な人がスクラムを組んでやっていけば、まだまだ、知恵が出てくると合間さん。その意欲的なまなざしに、特に感心していたのは、男性カメラマンたちでした。
合間さんの事業や研究にかける時の厳しい表情と、子どもと関わったり、カブトムシや野菜が育つのを見ている柔和な表情のギャップに、内に秘めた優しさを感じました。
竹の可能性を信じて、能登半島を西へ東へと奔走する合間さん。その姿から、どう動けば活路が見いだせるのか、どうしたら未来を切り開けるのか、そのヒントを得られた気がします。その一つは、「よく見て、よく聞き、よく考え、自ら動く」ということです。合間さんは、何でもよく観察しています。人の話にきちんと耳を傾けています。わからないことがあれば、すぐに相談にいきます。教わったら、教わった通りに素直に実践しています。そして、じっくりと考えています。そして、失敗を恐れずに行動に移しています。失敗しても何度もチャレンジします。また、周囲の人に自分が教わったことの良さを広めています。
使命感に燃えた合間さんから、自らの意志で、主体的に行動し、それによって周囲も変化していく、そこに何よりも人として生きる喜びがあるなと感じました。この生きる喜びを多くの子どもたちにも伝えたいなと思います。
編集を終えた今、私もさらに何かにチャレンジしたいと思っています。




合間さんの人間力。それは、「よく見て、よく聞き、よく考えて、自ら実行する」ことだと思いました。
合間さんの豊かな発想、その源は自然の中だけではありません。
◆よく見て、よく聞き、よく考えて、自ら実行する◆

様々な人の声に耳を傾けて、わからない事があれば、直接訪ねていきます。教わったことは実直に行動に移します。また問題をそのままにせず、自ら動き、解決します。

様々な発想が、一つずつ具体化していくのも、この行動力があるからかもしれません。そして、その活動の根底には、ふるさと能登の未来を思う、心があると感じました。

合間 修一(ごうましゅういち)さん(64)
株式会社サクシード 代表取締役
輪島事務所 石川県輪島市北谷町2-10
TEL/FAX:(0768)22-5166

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