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2009年6月27日(土)(テレビ朝日OA) 北海道放送制作
過疎化・高齢化が進み、赤字が深刻な地方の鉄道。廃止の瀬戸際にあるローカル線を守りたいと、知恵をしぼる鉄道マンがいます。JR北海道の副社長で技術者のトップ、柿沼博彦さんです。線路を存続させるためには、運行にかかるコストを今の5分の1以下に削減しなくてはなりません。そのために考え出したアイディアが、マイクロバスに鉄道の車輪を取り付け、1台で鉄道も道路も走れる車両を実現することでした。世界中で成功した例のないという、「夢の車両」です。3年がかりの開発には、北海道の厳しい自然で培われた技術が総動員されました。しかし、これまでの法規制の枠からはみ出る新しい車両を営業運転するためには、越えなくてはならないハードルがまだまだあります。地方の人たちの足を守りたい・・・その一念で開発をリードする柿沼さんの信念は、「人の役に立ってこそ技術」。その姿を追いながら、地域社会と鉄道について考えます。
◇ディレクター:南部 肇◇
今回の主人公、柿沼博彦さんが開発した「デュアル・モード・ビークル」(DMV)の取材を始めて5年になります。取材の現場で、何度もご一緒した柿沼さんは、いつもこんなことを口にします。「技術と言うのは、人様の役に立って初めて技術なんですよ。お客様に喜んでいただけて、初めて技術が完成したと言うんです」。鉄道の世界では「不可能」と言われ、時には「キワモノ」とさえ呼ばれるDMVの開発に情熱を注ぐのも、今ある鉄路をもっと多くの人の役に立つようにしたいという思いがあるからに、ほかなりません。なぜそれほど鉄道にこだわるのか。廃止してバスにしたほうが効率的ではないか。取材を通して、こうした疑問に数多く接して来ましたし、私も以前はそう考えることもありました。しかし鉄道は、都会から離れた人口希薄な地域に暮らす人にとって、道路やバスとはまったく質の違う安心感を与えているのです。事実、鉄道廃止に前後して人口が急減した地域が、北海道には数多くあります。しかも、赤字ローカル線の多くは、バスにしたところで黒字になるわけではありません。それを熟知している柿沼さんだからこそ、小型軽量のマイクロバスを線路に走らせることでコストを下げ、さらに道路も走ることで、今までにない便利な乗り物を作ろうという発想が出てきました。考えようによっては、このDMVは、開業前の東海道新幹線によく似た部分があると思います。新幹線が計画された半世紀前、これからの時代は飛行機が主役で、鉄道はもはや時代遅れという考えが、世界の趨勢でした。時速200キロの営業運転など鉄道にできるはずがない、鉄道は飛行機にかなわない、そう考えられていたのです。ところが、新幹線は大成功し、その後ヨーロッパや世界各地で、新幹線をヒントにした高速鉄道が生まれることにつながりました。スケールはまったく違いますが、DMVも同じです。ローカル鉄道は時代遅れ、鉄道はクルマやバスにかなわない、線路も道路も走る低コスト車両など、実用化できるはずがない。そう考える人の方が、今はまだ多いかも知れません。しかし、このDMVの実用化を待ち望む自治体や鉄道会社が、全国には数多くあるのです。成功すれば、赤字に悩む日本中の地方鉄道がこぞって導入し、鉄道再生の立役者となることが、十分に考えられます。番組でお伝えしたように、定員の問題などDMVの技術面は、ほぼ完成しました。後は、この新しい車両による営業運転できるよう、法律をどう改正してできるかがカギとなります。北海道生まれのこの小さくカワイイ車両が日本中のローカル線を走る・・・そんな日が来るまで、取材を続けようと思います。
道路と線路、両方走る車両をつくる
このアイディアは実は柿沼さんが初めてではありません。
70年以上前から、世界中で試みられ、そして失敗に終わってきました。
その理由はどれも鉄道側からの発想で、道路と線路に切り替えに時間がかかりすぎたためでした。
◆反対から見れば ひらめきがある◆
柿沼さんは鉄道で培ったこれまでの経験や価値観から離れ
車の視点でみたことが、成功につながりました。
◆“できない”と断言するのは難しい◆
未経験の最新技術ではなく、今ある技術を組み合わせることで、
新たな付加価値を生み出すのが柿沼さんのやり方です。
◆今ある鉄路を活用したい◆
鉄路にこだわるからこそ考えだされたこの夢の車両で、
地域の足を守りたい。
◆“夢の車両”で地域の足を守りたい◆
柿沼さんの想いが実現するのは、遠い将来ではなさそうです。
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