其の44 響 育 ~野外保育の「くじら雲」~

2009年4月25日(土)(テレビ朝日OA) 信越放送制作

長野県安曇野市で活動するNPO法人「響育の山里 くじら雲」は、自然豊かな里山を拠点に野外保育を行っています。帽子や長靴、リュックサックを身につけた子供たちは雨の日も雪の日も山道を歩き、庭では毎日焚き火を囲み、一日のほとんどを屋外で過ごします。代表で保育士の依田敬子さん(41歳)は、子供たちが感性豊かに生きる力を育むことが出来る場所を提供しようと3年前にくじら雲を始めました。既存の保育の枠組みにとらわれないスタイルが全国的にも注目を集めています。日々の保育の中で依田さんが何より大切にしているのは、一人ひとりの気持ちに寄り添うこと。子供たちはもちろん、常に迷ったり悩んだりしている保護者の気持ちにも丁寧に向き合います。まるで子育て支援センターのような雰囲気で、賑やかな声が響く「くじら雲」。地域の人をも巻き込んで、子どもたちが育つ環境をより良くしていこうとしている依田さんの思いに迫ります。




野外保育の「くじら雲」では大人も子どもも育ち合うことを一番大切に考えています。
◆子どもたちには自ら育つ力がある◆
子どもたちには自ら発見し、自ら学ぶ力がある。それを信じてそっと見守っているのが、保育士の依田敬子さんです。
◆ひとりひとりを大切に 心に寄り添う◆
大人の都合が優先される保育の現場に違和感を覚えた依田さんは、理想を求めて親子参加型の「くじら雲」を始めました。
◆大人も 子どもも ともに関わり ともに育つ◆
子育てに不安を抱える保護者は、お互いに悩みを分かち合いながら子どもの心に向き合おうとしています。
◆子どもたちが幸せに過ごせる社会◆
子どもたちが幸せに過ごせる社会をみんなで考え、作っていきたい。それが「くじら雲」・依田敬子さんの夢です。



◇ディレクター:信越放送 笠井直美◇
番組の後半でも様子を伝えた今年度最後の保護者会でのこと。一年を振り返るお母さんたちは、ほぼ全員が涙ながらに発言をしていた。ともに過ごした年長のお友達が明日巣立ちの日を迎える。そのことに感傷的な気持ちになっているのは分かるけど、どうしてこうもみんながみんな泣いているのか…。目の前で起こっていることをどう理解していいものか、私は少し戸惑っていた。
発言の中身からすると、お母さんたちはどうも悩みを抱えているらしい。それは子どもや夫をはじめとする家族との関係だったり、自分の生き方だったり…。子どものために通っているはずの「くじら雲」が、いつの間にか自分のための「くじら雲」になっている。子どもの姿を見つめることは、自分自身を見つめなおすことになっている。お母さんたちはそのことに気がついて、みんな涙を流していたのだ。
あくる日、ひとりのお母さんが手紙をくれた。「孤独な子育ては沢山の感性に蓋をしないとやっていけない。くじら雲は素の感性のまま、それをあらわにすることが出来る場所…。」この言葉を目にしたとき、私は初めて「くじら雲」の存在意義がわかったような気がした。
心のままに涙を流せる場所は、大人になるほど少なくなる。くじら雲のお母さんたちは、心の中で棚上げにしてきた気持ちを素直に吐き出して、涙を流しても許される場所や仲間を、無意識のうちにもずっと求めていたのだと想う。
日頃、息子を長時間保育園に預け、さらにジジババにも頼りっぱなしの私。愚痴や無関心や放棄は許されず、自分自身としっかりと向き合わざるを得ない子育てとは…。正直なところ恐ろしい。しかし、そんな子育て観を知ってしまったからには無視することも出来なくなってしまった。忙しさにかまけて、私の素の感性はすでに鈍っているのかもしれない。自分自身どれだけそのことに気づけているのかもわからない。ともかく、これ以上感性を鈍らせることのないように、これからも「くじら雲」の取材を続けていこうと思う。新年度が始まって慌しい日々、くれぐれも忙しさにかまけることのないように…。

NPO法人 響育の山里 くじら雲 代表:依田敬子さん
〒399-7104 長野県安曇野市明科七貴6695-2
TEL・FAX:0263-62-6337
※電話連絡はPM3時以降でお願いいたします。

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