其の36 ただのいぬ。~それでもぼくらは生きている~

2009年1月10日(土)(テレビ朝日OA) 山陰放送制作

2008年3月、島根県松江市で開かれた写真展「ただのいぬ。」保健所に収容された犬を撮影し、命の「明」と「暗」を表現しています。2005年に東京で開かれ、反響をよんだこの写真展、地方での開催は今回が初めてです。この写真展が島根で開かれるきっかけを作ったのは東京からUターンし、デザイン会社を経営する西原範正さん、仕事の傍ら動物愛護団体の代表を務めています。活動の始めるきっかけになったのは生後数日の捨てられた子ネコを保護したことでした。そのネコが西原さんの手の中で息を引き取ったのです。「何のために生まれてきた?」その思いが原動力となり、小さかった活動の輪は学校や地域、様々な人を巻き込み、どんどん広がっていきます。ペット社会が持つ問題に正面から向き合い、奔走する西原さんの姿を追います。


一匹の子ネコが西原さんに伝えた命の尊さ、その思いは地域を巻き込んだ大きな活動の輪になりつつあります
◆見捨てられた命を救いたい◆
人に見捨てられた犬やネコ、その命を救いたいとボランティア活動を始めた西原さん。
◆伝えたい「いのち」の結末◆
人に放り出された「命」の結末を伝える写真展を開きました。
◆遠いゴールを照らす「あかり」◆
写真展をきっかけに活動は地域の様々な人たちに広がりを見せます。
◆夢…致死処分ゼロを島根から◆
その仲間たちが西原さんの向かう遠いゴールを照らしてくれるのです。
「動物が処分されるっていうことがゼロになるっていうことがこの島根県から始まるっていうことが出来たらすごい素敵だなって思っててですね。それが目標ですね」
◇ナビゲーター:木野村 尚子(山陰放送アナウンサー)◇


◇ディレクター:山陰放送 斉尾和之◇
私が西原さんと初めて会ったのは1年ほど前。待ち合わせの場所に来た男性はスキン
ヘッドにハンチング帽、両耳にはピアスが6つもぶら下がっていた。職業はデザイナー、今更ながら西原さんには失礼だけど、正直“動物愛護”というイメージとは程遠い印象でした。しかし実際に取材をしてみると、しっかりとした自分の信念を持ち、真っ直ぐに進んでいく、実直な人。「人は見かけによらない」とはまさにこのこと。そして目標は「ペットの致死処分ゼロ」という途方もないもの。年間全国で処分されているイヌネコは30万匹以上というデータを聞くと尚更、無謀と思わざるをえまぜん。更には西原さんが普段やっているボランティア活動だって自分のプライベート、いや仕事時間を削ってやっていて、報酬がないどころか交通費やガソリン代、保護動物のエサ代とほとんど自費で回しています。
それでも東京に連れて行ったネコに新しい飼い主が見つかると「いやー、お金はかかっちゃったけど、旅行みたいなもんだと思えば、何よりあのネコが幸せになるんだから」と笑って
話してくれます。
番組の中でもエピソードとして登場しますが、西原さんが愛護活動をはじめたのは保護した生後数日の子ネコが手の中で息絶えたこと。確かにショッキングな出来事だし、愛護
活動を始めるきっかけとしては十分理解できるものでした。ところがその活動内容は前述の
通りほとんどが本人の負担によって成り立っています。電話をかける度、「いま山口です」
「いま神奈川です」、しょっちゅう動物譲渡のために全国をあちこち。さらには番組で取り上げた写真展にも7桁の額を自らつぎ込んで開催にこぎつける。「いやー、貯金なくなっちゃいました」って、なんであなたは笑っていられるんだ、あまりにすご過ぎて言葉が出ないこともしばしばありました。
でも西原さんのすごいところは傍から見てすごいと思うことを人に愚痴や文句も言わずに淡々とやってしまうところ。番組でも登場しますが獣医やほかの動物愛護団体をはじめ
一般の方も西原さんに協力したいと名乗り出ます。そしてその仲間の輪は日を追うごとにど
んどん大きくなっています。
「最初は途方もないこと、暗闇の中をもぞもぞするような感じだったんですけど、活動をするうちにその暗闇の中に“あかり”(仲間)が増えてきて、逆にやる気が出てくるんです」最後の取材で西原さんはそう話して下さいました。「ペットの致死処分ゼロが目標」そんな
とんでもなく果てしない目標もこの人なら…そんな風に思わせてくれる「人間力」のある方
でした。

 

島根動物愛護ネットワーク 代表:西原範正

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