2008年12月27日(土)(テレビ朝日OA) 北海道放送制作
全長15メートルのクジラがあげる、白い噴気。その迫力は、海の生き物の生命力を感じさせます。北海道・室蘭市の笹森琴絵さんは、荒れた海の上で、数キロ向こうにいるクジラやイルカを見つけることができる海洋生物調査員です。その腕前を買われ、国内外の調査に参加し活躍していますが、この世界に入ったのは意外なきっかけでした。彼女は15年前に病気で職を失い、順調だった人生が暗転しました。思い悩む彼女を救ったのが、故郷の海で出会ったイルカやクジラでした。厳しい海でたくましく生きる姿に力をもらったのです。元気になった笹森さんは今、イルカやクジラの魅力を伝え、彼らの暮らす海を守るのが使命と、海の環境教育に取り組んでいます。シャチ、ニタリクジラ、カマイルカなどを追いながら活動する笹森さんを通して、人と野生動物の魅力ある関係を探ります。
今日の主人公、笹森琴絵さんは、小さい頃から、故郷・室蘭の海が大好きでした。
◆生きる力が伝染する◆
室蘭に戻った笹森さんは、地元の中学生と海岸のごみ拾いをしていました。小さい頃から海と接してきた。大人になるまでちょっと回り道したけど結局また海の仕事ができていて、いつも何かのたち直りにきっかけは海から貰っていたと思う」
◆夢をもって生きてほしい◆
海から学んだのは生きるために生きるという前向きさ、夢を持つ事でした。
◆自分の命より大切なものがある◆
人間が忘れてしまった家族の絆、命の大切さを教えられたこともありました。
◆夢…ずっと海といること◆
そして、夢は、ずっと海といること「海と結婚したようなものですよね。海大好き」
◇ナビゲーター:佐々木佑花(北海道放送アナウンサー)◇
◇ディレクター:北海道放送 西澤 敏◇
(カマイルカのジャンプ@噴火湾/撮影:笹森琴絵 無断転用禁止)
「なんとなくそこにいるような気がする」と、笹森琴絵さん。
どうやったら遠くのイルカやクジラを見つけることができるか質問した時の答えです。番組の主人公の笹森さんは、イルカやクジラの国際共同調査にも参加するプロフェッショナルな調査員。海で動物を見つける発見率は群を抜いています。そんな人がこんないい加減なことでいいのか!、と思うかもしれませんが、この「なんとなく」言葉の意味がよく解ります。私も野生動物の取材を長くしていますが、フィールドで野生動物を見つけるコツは「変化」です。海の調査では水平線から手前の海面を左右180度、目線を移動させながら見ています。見ているのは動物がいるかいないかではなく、海面に変化があるかどうかです。細かいところを見ているのではなく、大雑把に見ているわけですね。不規則な波とか、不規則に現れる白い部分とかです。そこで、何か変化があったと見ると、双眼鏡で、その場所を詳細に見るわけです。これは森や山でも同じです。風景、音、匂い、いつもと違うことにアンテナを張ります。ただ私たちと決定的に違うのは、射程の広さです。笹森さんは、クジラなら3キロ先の噴気でも見つけることができます。見つけた後、船で向かっても、現場に行くまでに相当の時間が必要です。笹森さん以外は、どこに何がいるかは全くわからないことがほとんどで、みんなキツネにつままれたような気分です。
(船の一番高いところで目視する笹森さん。10月でこの服装/取材テープから)
こんな笹森さんのもうひとつの特技が、トイレに行かないこと。10時間の調査で1回もトイレに行かず、常に海を見続けています。秋の釧路取材では、海上の気温は6度前後。風が吹けば凍える寒さで、北海道の真冬と同じ寒さです(実際に服装も同じ冬装備です)。漁師も一目置く船での身のこなし。アラスカの山奥から出て来たような服装。1日持ち場を離れることはなく、大好きな「とうがらしセンベイ」で寒さと眠気を誤魔化しながら目視を続けます。
笹森さんのそんな強靭な精神力の源にあるのが、挫折から立ち直った人生秘話です。「信念を持った人」の素晴らしさを痛感し、取材を担当した私自身も多くの「刺激」を受けました。テレビをご覧頂いた方にも、この「刺激」が伝わればと思い、編集も工夫をしました。
(出現したシャチを撮影する笹森さん/取材テープから)
ところで笹森さんはカメラマン泣かせの出演者です。いつも海にいるため、日焼けというか、潮焼けで肌が真っ黒なんです。顔の太陽の当たっているところに露出を会わせると、陰の部分は真っ暗。暗い部分を見えるようにしようとすると、明るい部分は露出オーバーになってしまうんです。インタビューの時の映像をチェックして頂けると、それがよくわかってもらえると思います。
笹森琴絵さん、45歳。調査以外の取材の時には「スカートでもいいですか」と聞いて来る、ちょっとお茶目な女性です。
(釧路市立博物館の環境教育展示。後ろの写真は笹森さんが撮影したもの
/取材記録写真から)
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